初版たった4,000部だったレシピ本が「料理レシピ本大賞」を受賞するまで
ライツ社刊『全196ヵ国おうちで作れる世界のレシピ』(本山尚義)が「料理レシピ本大賞2018」において、特別選考委員賞を受賞しました。
「料理レシピ本大賞」とは、全国の書店員が日本一売りたいレシピ本を決める賞で、言い換えるなら、日本一売りたい小説を決める「本屋大賞」のレシピ本版です。
そして、「特別選考委員賞」というのは大賞の次点で、書店員+日本中のプロの料理人が推薦する一冊として選んでいただいた賞だそうです。
著者の本山尚義さん(すごく嬉しそう)。コック服(正装)で登場です
受賞されたみなさんとの集合写真(隣にいらっしゃるアフロの稲垣さんが目立ちすぎてつらい)
プレゼンター・キャイーンの天野さん! からトロフィーを受け取る(料理好き芸人として有名です)
小さな町から生まれた、大きなストーリー
企画の始まりは、クラウドファンディングでした。CAMP FIREで制作費を集め、2017年12月に出版。初版たった4,000部だったレシピ本は、ジリジリジリジリと売れ行きを伸ばし、6刷28,000部、そして賞を受賞するまでにいたりました。その過程がこちらです。
2016年12月 クラウドファンディング開始
2017年3月 クラウドファンディング達成→制作開始
2017年11月 cakesにて全掲載料理を公開→バズ
2017年12月 出版前に朝日新聞に紹介され発売前重版→出版
2018年1月 関西の人気テレビ番組・MBS「ちちんぷいぷい」、朝日放送「おはよう朝日です」に連続出演→重版3刷
2018年2月 全国書店で、著者が事業展開する「レトルト食品」との併売開始→重版4刷
2018年4月 念願の重版5刷突破!
2018年5月 「料理レシピ本大賞」エントリー
2018年6月 勢いは書店を飛び出し雑貨店へ。レトルト食品とともに「東急ハンズ全店」で取り扱い開始
2018年8月 全国の「LOFT」で取り扱い開始
2018年9月 「料理レシピ本大賞」特別選考委員賞受賞! →重版6刷
著者の本山尚義さんは神戸市の灘区在住、ライツ社はそのお隣・兵庫県明石市にある出版社です。日本の小さな町で、クラウドファンディングから生まれたこの企画。そして、初版たった4,000冊で産声を上げた本は、足かけ1年半をかけて、このような大きな舞台にまで届きました。
選考委員のみなさまからのコメントも、感極まるものばかりでした。
・各国の食文化も知れて、読み物として見てるだけでも楽しい!
・こんな材料を使うの!? と驚きながらも絶妙に「作れそう!」な料理の数々。
・スーパーで買える食材で、世界旅行を味わえる。つまり、日本のスーパーに不可能はないのかも。
・このような専門的なレシピ本は「プロ用」になりがちですが、一般の方でも作れるようなレシピを考える、その過程での試行錯誤を想像するだけでも頭が下がります。
・今回の料理レシピ本大賞の中でも、内容の面で異彩を放っている。
代表料理・メキシコの「モレ・ポプラーノ」(鶏肉のピリ辛チョコレートソース煮)の動画です。
CAMP FIRE=焚き火
著者の本山さんは受賞のコメントで言っていました。
世界の料理をご自宅でつくることで、少しでもその調理時間に世界のことを想像していただけたら。そして、その料理を食べることで、少しでも世界がグッと身近になれば。
トロフィーはお皿でした(お花がアイスクリームのコーンみたい!)
『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』有賀さん(入賞!)
『みそ汁はおかずです』瀬尾さん(大賞!)
本山さんは、料理で世界を平和にしたいと心から願い、世界中を1人歩き、料理を学んできました。そして今は神戸の魚崎という小さな町から、世界のレトルト食品を発信・販売し、日本中にそのきっかけをつくり続けています。そして、料理で誰かを笑顔にしたい、料理を好きになってもらいたいという気持ちは、今回受賞されたほかの著者の方々も同じだと思います。
この記事を書いている、つい先ほども、とても嬉しい連絡が届きました。
学生さんが「出版されている本とまったく同じ本を作ろう」という授業で、世界のレシピの本を作りたいそうです。来週火曜にまた電話します、と仰ってました。
小さな町で、著者が燃やしはじめた焚き火のような「熱」から生まれた本が、このような大きな賞を受賞できたことは、全国の小さな出版社や、小さな活動を真摯に行なっている人にとって、大きな大きな「光」となるのではないかと思います。
出版社の役割とは
出版社の役割とは、小さな町から生まれる企画(熱)を大きなストーリー(光)に変えて、たくさんの人に届けること。そして、大切なことは、その火をその熱を、燃やし尽くすのではなく消費し尽くすのではなく、丁寧に薪をくべ続けること。
関係者のみなさま、読者のみなさま、本当にありがとうございました。これからもご支援、ご声援よろしくお願いいたします。