印刷の立場から子どもたちに本の面白さを伝える。「本の印刷見学ツアー」@藤原印刷
今回の記事は、長野県の老舗印刷会社・藤原印刷の藤原隆充さんに寄稿していただきました!
藤原隆充プロフィール|
兄の方です。 創業70年の印刷会社の三代目。コンサル→ITベンチャー→地方の印刷会社(家業)。紙の可能性を最大化して、世の中に気持ちのこもった質の高い本を送り出し続けます。 Print is not die.
藤原印刷株式会社プロフィール|
創業70年の書籍に特化した印刷会社。企画の段階から造本における仕様の提案を得意とし、本づくりそのものを全面的にバックアップする。従来の印刷会社のイメージにとらわれず、「印刷屋の本屋」や「楽しさを伝える工場見学」などを展開し、新しい印刷会社を目指している。
本の印刷見学ツアーが開催
7月20日(土)、長野県にある塩尻市立図書館さん主催の子どもたちのための「本の印刷見学ツアー藤原印刷」が開催されました。
今年で2回目になるこのイベントは、同図書館が中心となって行なう“信州しおじり本の寺子屋”というお取り組みがきっかけで生まれたもの。
「本」の可能性を考える機会を広く提供する活動に共感し、藤原印刷も子どもたちに印刷の立場から本の面白さをお伝えしたい、と協力をさせていただくことに。
イベントの募集がスタートしたその日に定員20名の枠が埋まったとのことで、わたしたちも気合いたっぷりにこの日を迎えました。
「紙積み」と「色練り」に小学生が挑戦
参加してくれたのは小学1年生から4年生の子どもたちと、そのお母さんお父さん。
2グループに分かれて、「紙積み」や「色練り」などの準備から、実際に印刷機を動かし、信州しおじり本の寺子屋のロゴが入ったしおりを印刷するところまで体験していただきました。
「紙積み」とは、美しい印刷に欠かせない工程の1つ。
納品された紙を、1枚1枚の間に空気を入れながら積み直すことで、揃えやすくし、印刷機に通したときにスムーズに送られるようになります。社員によるレクチャーを受けて、いざ実践!
大人でも重い紙を、少しずつ慎重に持って運ぶ子どもたち。終わった子に感想を聞いてみると、
「見たときは簡単そうだったのに、めちゃくちゃ重くてむずかしかった!」
良いリアクション。そうなんです。この紙積み、意外と大変な作業なのです。
最後に社員がまとめてドスン、ドスンと手際よく積んでいくところを見せると、「すご~い!」という歓声と拍手が起こり、社員もドヤ顔に。
次は「色練り」に挑戦。
自分たちで黄と青のインクを練って「緑」をつくり、そのインクを使って印刷をします。鉄板にインクを乗せて、ヘラで8の字を書くように練っていくのですが、実際にヘラを持った子どもたちは、インクの粘りが重くて動かしにくそう。
仕上げに社員による本気の練りを見せると、想像以上のしなやかで速い動きに、歓声と同時に「はやすぎる~!」と笑いが起こっていました。
準備が終わり、いよいよ印刷
先ほど積んだ紙を、ハンドリフトで印刷機にセットしていきます。このハンドリフト、慣れていないと全然思うように動いてくれないのですが、みんなで力を合わせて頑張りました。(うぅ、かわいい)
版をセットし、みんなでつくったインクを入れると、紙を送る側、出てくる側に分かれます。
かなり長~い機械なので、普段は2人1組となって動かしていて、両端から意思疎通がとれるよう、トランシーバーのような機能がついています。
出てくる側で「紙出してくださーい!」というと、送る側からは「はーい!」という返答が。機械を動かすボタン、紙を送るボタンを押してもらい、印刷が始まります。
出てきたものを確認する表情は真剣そのもの。小さな印刷オペレーターさんたち、なかなか様になっています。(覚えたことをしっかりと書き留める様子もすばらしいですね)
こうして一通りの体験を終え、自分たちが実際に刷ったしおりが配られます。(みんな嬉しそう)
最後には、藤原隆充よりメッセージを送りました。
「みんなが普段読んでいる本は、出来上がるまでにとてもたくさんの人が関わっています。今日実際に体験してみて大変だったことを思い出して、今後も本や紙を大切にしてくださいね」
つくる工程を実際に体験してもらうことで、読むだけではない本の魅力に気づいてもらえたのではないでしょうか。
今回子どもたちがつくったしおりは、塩尻市立図書館にてお配りしているそうです。
こんなふうに、あなたの住む街でも本にまつわる様々なイベントが企画されていると思います。夏休みに、ぜひ足を運んで参加してみてはいかがでしょうか。
今回の執筆の経緯
ライツ社:「ライトな出版業界紙 on note(β)」を発表
↓
藤原隆充:ライツ社Twitterの投稿をシェアしてくださる
↓
ライツ社:同じタイミングで告知されていた「本の印刷見学ツアー」を記事にしてください! と依頼(単純に工場見学してみたかったでも長野だから行けない)
↓
藤原隆充:2つ返事で「了解です!」イベント終了後執筆していただく
こんなふうに、みなさんの身の回りの「本」にまつわるイベントレポートなどの情報もお待ちしています! ご連絡は、info@wrl.co.jpまで!
出版業界を新しくしたい。もっと良くしたい。読者と、書店と、友達のような出版社でありたい。「本ができること」を増やしたい。いただいたサポートは、そのためにできることに活用させていただきます。