庭師の道具 お手入れ編|平屋私庭日記#16
春が来た。そうしっかり言い切っていい春がやっと来た。トラックや自転車で街中をまわっていると桜の木は思ってるよりあちこちにあるんだなって思いますね。街中の桜を見てると春に浮かれてくるし、やっぱり街の景色をがらりと変えてしまうこのコたちの春宣言パワーで右に出るやつはいませんね!
通勤途中にある八尾 玉串川の桜並木。大阪に出て来て14年目、いつの間にか桜といえば故郷ではなくここの風景になってる。今年もキレイです。
庭師の道具 お手入れ編
今回は僕たち庭師の道具からお手入れで使うものに絞って紹介できればと思います。ちなみに僕が所属するグリーンスペースは所有道具が少ない方かなと。道具はコンパクトに最小限にし機動力をあげたり、道具に頼りすぎたくないって考えがあると思います。
お手入れの目的は庭のバランスを整えて美しい空間にしていくこと、植物たちをより良く成長させること。そのために木々を剪定したり足元の起伏の手直しや、土間や壁面の高圧洗浄、オーガニックな消毒や有機液肥の注入などを行っていきます。そういう作業をひっくるめて僕たち庭師の手を入れる「お手入れ」と僕たちはよんでいます。
僕たちの腰回りにはこんな道具がぶら下がってます。左から殺菌剤、ノコギリ、植木鋏、剪定鋏。これらがお手入れに一番使う道具なのですぐに取り出せるように身につけてます。
細かく紹介していくと…
植木鋏
植木鋏。繊細な作業から太めの枝まで切れる便利もの。僕はアルスのU-600という鋏を使ってます。
ちなみに親方ジロさんは京都の鋏鍛治職人 大隈さんの和鋏を使用してます。
この鋏は一つ一つ手打ちで作られてて、注文してから5年待たないといけないとか。僕も欲しいけれど価格はもちろん立派だし、五年待たなきゃだしなかなか手が出せない代物です。いつか1本欲しいなぁ
そんな植木鋏、和鋏は仕立て松などの繊細な剪定に欠かせません。※写真は僕の剪定の師匠god of matsuさん。ラフォーレ原宿の源氏山テラスにて。ちなみに松の足元に引いてる緑色シートは松の細い葉っぱを集めやすくするための必需品。これがあるだけで掃除のスピードが断然早くなる。
剪定鋏
剪定鋏。僕の親指くらいの枝の太さなら簡単に切れる優れもの。これさえあればノコギリがなくてもある程度の枝は剪定できる。僕はスイス製のフェルコ No,11を使用、この持ち手の赤色がかっこいいし、スイスってのがいい!
ノコギリ
生木用ノコギリ。庭師は生木を切るので目が荒い生木用ノコギリを使います。写真はシルキーのゴム太郎240mm。刃が交換できるタイプなのでヘタっても安心、しかも使いやすい。
殺菌剤
最後は殺菌剤 トップジンMペースト。植物は生き物なので切り口から菌が入れば弱ったりしてしまうこともある。この殺菌剤を塗り込めば病原菌の侵入を防いだり切り口の回復を早める効果があるとか。この商品のおかげて桜など昔から剪定はタブーだと言われてきた木々たちも剪定できるようになったんだとか。
これらの道具を選んでいる理由は僕たちの事務所から徒歩圏内にある造園資材屋さんで取り扱っているから。道具は消耗品なので折れたりヘタったりがいつ起こるか分からない。だから何かあった時すぐに対応できる場所で取り扱ってるものの中から納得できる道具を選んでいます。
高さの道具たち
木々は高くて10mくらいになる。ですので剪定には脚立が欠かせません。
庭師が使うのは三脚の脚立。生い茂った植物の中で立てるために一本が独立した状態のもの。それから庭は起伏など傾斜が多いため四脚より三脚の方がバランスが取りやすいです。ちなみに写真の左は10尺、右は6尺。1尺は30センチ。
けっこう背の高い木々には15尺を使います。1尺が30cmだから4m50cm。188cmの僕が天場に立つと体感高度は約6m50cm、まぁまぁ怖い。
ここまで高いとカナリ揺れるし危険が増すので高所作業が平気な僕とgod of matsuさんが登ります。平気だからこそ安全第一で慎重にです。
それでも届かない場合や立地によってはクレーンにカゴをつけて上がります。僕は高いところが好きなのでカゴが好き。
掃除の道具たち
剪定などが終われば掃除が始まります。
手ホウキという竹を束ねたもので、手箕(テミ)に集めていきます。この手ホウキは荒いゴミから砂利や苔の上に落ちてる細かいゴミまで集められる優れもの。もちろん使う僕たちのさじ加減が必要になってきます。
ブロアという風を送る道具。これは庭界の文明の利器で一番のものだと思ってます。上手く使いこなせればものすごく早く綺麗に落ち葉などを集めていけます。もちろん使い手の経験が必要なんですけどね!
最後に
僕たちが使う道具はシンプルで誰でも使える単純なものが多いと思う。そのぶん使い手によって道具能力が変わってくる。剪定された木々の切り口をみればその人の能力が分かるし、手ホウキではき終えた足もとを見ればどこまで庭の細部から全体まで見渡せているか分かると思ってる。
職人は道具の使い方や作業をお互いに肌で触れ合うとその人の力量がすぐに分かってしまう。もちろんそれはお互いに。そこが面白さでもあるけど怖さでもある。 僕ももっと道具の能力を引き出したいなぁ。
ホームセンターに置いてる道具もあるので、よければお試しを。
定点写真#16。リンゴとジューンベリーの花が咲いて平屋の庭もより一層春になってきた。次はブルーベリーあたりが咲いてくるかな
GREEN SPACE 若手庭師 中山 智憲
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