インターネットと新聞をつなぐ広告、という試み
ライツ社の大塚です。12月17日(火)付の日経新聞朝刊で、『最軽量のマネジメント』(サイボウズ式ブックス)の全面広告を出稿しました。
広告内容は、おそらく広告のアイデアとしては日本で初めて、noteに投稿された書評記事をそのまま広告として掲載する、というもの。このアイデアに至った背景をお伝えしたいと思います。
発売直後からnoteにたくさんの書評が投稿された
11月の発売直後から、『最軽量のマネジメント』に対して、たくさんの書評がnoteに投稿されました。同ジャンルのビジネス書と比べてみても、タイミングがとても早く、その数も、とても多かったのです。
なんでだろう? と思ったとき、「サイボウズ式」で7年かけて育まれてきたコミュニティの存在に思い当たりました。シンプルに、この本の出版を楽しみにしてくれる人がたくさんいた、本の内容に共感してくれる人がたくさんいた、ということ。とても嬉しい出来事でした。
重版決定➡︎本の存在をもっとたくさんの人に知ってもらいたい➡︎じゃあ、どうするか?
そして、ありがたいことに初速は好調、発売2週間で重版が決まりました。重版が決まったあと出版社がやるべきことは、「本の存在」をより多くの人に知ってもらうこと。その方法の1つが広告です。いくら数を刷っても、知ってもらわない限り本は売れないからです。
そして、いろいろなタイミングと条件が重なり、日経新聞の全面広告を出稿できることになりました。そこで思いついたのが、noteに投稿いただいた書評をそのまま新聞広告として掲載させてもらう、というアイデアでした。
書評とは、つくり手と読者との仲介者である
書籍の評論をいただけることは、つくり手として、大変嬉しくもありますが、同時に、大変緊張することでもあります。ときに制作側すら気づいていない本質的な解釈が書かれることもあれば、誤植の指摘など、一つひとつの書評から日々、勉強させていただくことばかりです。
そして、一つの書評をきっかけに、たくさんの読者の間で議論を生む光景を見ることもあります。一冊の本に込めたメッセージが、より広くより深く噛み砕かれていく光景は、とてもありがたく、出版社冥利に尽きるものです。
当たり前ですが、本は読むまで内容がわかりません。そのため、「自分にとってどんな意味があるのか」がうかがい知れる書評は、つくり手と将来の読者をつなぐ仲介者になります。そして今回は、より多くの、インターネットだけでは届かない方々に見ていただけることを期待し、noteに投稿された篠田真貴子さんの書評を新聞広告として掲載させていただきました。
課題① インターネット上の書評が、リアルな読者に届いていないのではないか?
このアイデアが浮かんだ背景として考えていたことは2つです。その1つ目が「インターネット上のすばらしい書評も、紙から情報を得ている読者には届いていないのではないか?」という疑問でした。
いまだ、書籍の実売を上げていく有効な手段は新聞です。広告はもちろんですが、何より新聞の「読書面」や「書評欄」で紹介された本はすごく売れます。それが「書評」が持つ力です。
一方で、ウェブ上にも、篠田さんのマガジン「きのう、なに読んだ?」をはじめ、書評記事がたくさんあります。ウェブ上にある書評記事のすばらしい点は、実践者(それはビジネスだったり研究だったり)による、自身の経験と重ね合わせた書評が多い、ということ。だからこそ、「自分にとってどんな意味があるのか」を判断する重要な材料になっているはずです。
ただ、せっかくウェブ上にすばらしい情報があるのに、紙から情報を得ている読者層には届いていない。これがすごくもったいないなあと感じていました。
課題② できるだけ「真実」をそのまま広告にしたい
せっかく、日経新聞全面広告という大きな機会、大きなスペースをいただいた。いろんなアイデアの可能性がありました。パワー勝負で思いっきり、書影を大きく載せる。素敵なコピーを考えてもらって、いい感じにデザインしてもらう。でも、どの案も「作られた感」が否めなくて、しっくり来なかったのです。フィクションで、本を広告したくない。これが2つ目の課題でした。
ちょうど、思い悩んでいたタイミングで、篠田真貴子さんの書評記事が上がったのです。見た途端、これだと思いました。そもそも、新聞の書評が読者に信頼されているものであるならば、書評そのものを広告に使えないだろうか、と。違うのは、それが「読書面」か「広告面」という場所の違いだけ。実際につくってみると、とても気持ちのいい紙面が出来上がりました。
つくり手と読者をまっすぐに繋げる広告がいいな
シンプルなアイデアでしたが、この施策は、「書評」で、インターネットと新聞をつなぐ広告という、新しい試みになったのではないかと思います。
広告ってなんか嫌われている風潮がありますが、出版業界にとっては、広告って、シンプルにつくり手と読者をつなぐものだと思っています。その表現を、誇張やフィクションによる飾りつけではなく……。
公明正大なアイデアの元つくられた広告は、つくり手と読者を、もっとまっすぐにつなげてくれるはずです。
出版業界を新しくしたい。もっと良くしたい。読者と、書店と、友達のような出版社でありたい。「本ができること」を増やしたい。いただいたサポートは、そのためにできることに活用させていただきます。