「広告は、いったい何をしてきたんだろう?」 という問いへの回答【3月9日18時】
これからの時代のマーケティングを学ぶベストセラー書籍『ファンベース』の著者、コミュニケーションディレクターさとなお(佐藤尚之)さん。
そして、ライツ社から新刊『マイノリティデザイン 弱さを生かせる社会をつくろう』を出版する澤田智洋さんのオンライントークイベントが、3月9日にSPBS(Shibuya Publishing & Booksellers)さん主催で開催されます。
以下、『マイノリティデザイン』編集担当:大塚による執筆です
トークテーマは「社会課題とビジネスは、どのようにつなげられるのか?」
SPBSさんが用意してくださったトークテーマは、「社会課題とビジネスは、どのようにつなげられるのか?」。
多様なバックグラウンドを持った個人や組織が共存することを目指すこれからの社会において、ビジネスと社会課題をつなぎ新たな価値を創造する「マイノリティデザイン」という考え方は、どのように実装できるのか?という問いについて、お二人にお話いただきます。
では、なぜ今回、このトークテーマでこの二人なのか?
今から約8年ほど前、コミュニケーション・ディレクターの「さとなお」さんが書いたこんなブログ記事が話題になりました。ご存知の方も多いのではないでしょうか?
当時、家電メーカーの業績が悪化していたときのことです。
2013/3/25 post
最近、広告人と話すとき、「シャープやパナソニックやソニーの凋落をどう思うか」と話題を振ってみることがある。そして少し絶望的な気分になる。だれもそのことを恥じていないからだ。少なくともボクが話した人たちはピンと来ていなかったし、積極的に恥を感じている人に会ったことはない。「おかげで広告の売り上げが下がったよ」と嘆く人が多いし、客観的に(他人事みたいに)各社の戦略ミスや製品の開発姿勢などを批判する人すらいる。まぁわかるんだけど。でもさ、もっと恥じようよ。広告人、もしくは広告会社は、シャープやパナソニックやソニーの凋落を恥じるべきだし、そのことをもっと反省してやり方を変え、違う姿勢でクライアントに向き合っていかないといけないとボクは思う。シャープやパナソニックやソニーがこれまでどれだけ広告費を使ってくれたか。そして我々広告人や広告会社は、商品広告のみならず、イメージ広告やブランド広告、イベント、販促などを駆使して、シャープやパナソニックやソニーのファンを作ってきたはずなのである。少なくとも、それを目標に広告コミュニケーションを考えてきたはずなのである。なのに、生活者は、ちょっと他メーカーでいい製品や安価な商品が出たらすぐそっちに行ってしまった。ファンとして応援する声も(一部を除いて)聞こえてこなかったし、業績が悪い会社の商品を買い支えるなんてことも起こらなかった。広告はいったい何をしてきたんだろう。
澤田さんは、『マイノリティデザイン』の中でもこの一節を引用され、こう感想を述べています。
「頭をなぐられたようなショックを受けた」「自分自身、もがきながらも自分なりの働き方を模索していたつもりだった。でも、そもそも『広告会社自体の存在価値ってなんだろう?』と考えざるを得なくなった」
「広告は、これから何をしていくんだろう?」
それから数年が経ち、澤田さんが出した答えこそ「マイノリティデザイン」だったのかもしれません。ひとりが抱える弱さを起点に、みんなが生きやすい社会をつくる。だれかの「弱さ」を「力」に変えるアイデアのつくり方ーー。
「いい仕事をしたい」という、だれしもの願いを叶えられない世の中はどうなのか。まるで、はじけて消えるシャボン玉を無限につくる仕事をしているような。僕らが陥っていたのは、クリエイティブとは真逆の「納品思考」。 資本主義(=強者)の伴走者のまま、才能を食い尽くされていいんだろうか。広告(本業)で得た力を、広告(本業)以外に生かそう。担ぎ手が渋滞している神輿より、道に置かれっぱなしの神輿を担ごう。秒単位の「暇つぶし」ではなく、成長していく「生態系」そのものを。(目次より抜粋)
澤田さんが、「いわゆる通常のテレビCMやポスターなどの広告をつくることをやめ、VRでもARでもなく、『ゆるスポーツ』をはじめとする『NR(ニューリアリティ)』をつくる」と決めたのは、さとなおさんのブログを読んでから数年後のことでした。
「市場を刈り取る」なんて、怖い言葉を使っていませんか?
『マイノリティデザイン』の中にはこんな一節も書かれていました。
この本を書いている最中、さとなおさんにお会いする機会がありました。1時間ほどお話しさせていただく中で、こんなことを言われました。
「たまに『顧客を囲い込む』とか『市場を刈り取る』なんて言葉遣いをする人がいるよね。そういう言葉遣いって嫌だよね。絶対使っちゃいけない言葉だと思うんです」と。
そもそも「ターゲット」は弓矢を射る的のことだし、地道に電話をかけたりビラをまいたりするのを「地上戦」、テレビや新聞などマスメディアを使うことを「空中戦」なんて言う人もいます。失礼な話だなあ、と僕も思います。相手は、感情を持って生きている人間なのに。
なら、出すべきアイデアは、市場を刈り取るためのものなのか。それが本当にすべてなのか。
さとなおさんの新刊『ファンベースなひとたち ファンと共に歩んだ企業10の成功ストーリー』には、こんな言葉があります。
人口急減や超高齢化、超成熟市場といった消費環境の一大変化に加え、相次ぐ自然災害の発生などで「先が見えない時代」。あなたの会社や事業の逆境を支えてくれるのは、まだ見ぬ新規顧客ではなく、熱烈に愛してくれている「ファン」の存在です。
一方、『マイノリティデザイン』には、こんな言葉があります。
ここ数年、「課題不足だ」という話をよく聞きます。でも同時に、「それって、課題を掘る場所を間違えてるんじゃないか?」と思うこともよくあります。課題は、いまだに山積しています。マス(中間層)からこぼれ落ちている「マイノリティ」と呼ばれる人の中に。王道的なマーケティング活動の外側は、多様性に溢れていました。
『ファンベース』にも『マイノリティデザイン』にも、これからの事業創出やマーケティングにとって大切なことが、たくさん書かれているように思います。そして、その二人のトークセッションから新たに生まれる発見がとても楽しみです。
ご興味のある方はぜひお申し込みください。3月9日18時です。