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「クルトシュ」_これから日本で絶対流行る、ハンガリーの煙突の形をしたケーキ|世界のお菓子(食)を巡る旅#2


ハンガリーの有名なお菓子は? と聞かれても、思い浮かばない人が多いのではないだろうか。そもそも、場所もあんまりわからない。

ハンガリーはいわゆる「東欧」の国で、フォアグラやTOKAIワインが有名だけれどここ数年、ハンガリー発の「お菓子」が近隣諸国で大人気だ。

それが「チムニーケーキ」。

写真を見ればおわかりいただけると思うが、チムニー(煙突)の形をしている。地元の人からは「クルトシュ」という名前で愛されているのがこのお菓子。(実際はケーキ、というより菓子パンと言われた方がしっくり来る)

わたしが訪れた11月の末は、まだクリスマスマーケットが始まる前だったのでそこまで屋台は出ていなかったけれど、それでも街中でちらほらお店は目にしたし、何より香ばしくて甘〜くてやさしい香りに誘われるようについ足が向かってしまった。

「クルトシュ」の歴史は中世まで遡ると言われていて、元々は祭事やお祝い事の時には欠かせなかったんだとか。現在は催事以外でも販売されるようになったくらい、この国の人達に愛されている。

小麦粉でつくられた生地を発酵させて、棒にくるくると巻きつけて回しながら焼き、シナモンやナッツや砂糖をまぶして熱々のうちにいただく。口に運ぶ前からシナモンの香りが漂い、外は香ばしく中はふんわりしっとり。昔読んだ絵本に出てきそうなルックスも素敵。素朴な味わいがまた食べたくなる秘訣だ。

お隣のチェコでも人気で、12月に入るとクリスマスマーケットのあちこちに「トゥルデルニーク」の名で販売され、多くの人がこのお菓子を片手にクリスマスを楽しんでる様子が伺える。チェコに訪れた観光客がチェコの伝統菓子と思い込んでしまうほど馴染んでいるのだ。

最近では、チェコではどうやらクルトシュが少し形を変え、中にアイスクリームや生クリームやチョコレートクリームを入れたり、トッピングも華やかになり、若い女の子を中心にますます人気を博している。日本にもすでにいくつかお店があるようだし、この新しいスタイルのクルトシュが、日本の若者の間でもすぐ人気になるのが目に浮かぶ。

クルトシュ以外にも「トボシュトルタ」をはじめ、伝統的なお菓子ももちろんある。そして素敵なパティスリーやカフェも多い。老舗から近代的なカフェまで様々だ。

その中でも、首都であるブダペストに住む人で知らない人はいないであろうカフェが1件。150年以上歴史のある「Gerbeaud(ジェルボー)」はエリザベート王妃も愛した「ハンガリーの至宝」と称される老舗。時間帯を問わず、多くの地元民と観光客で賑わっている。


いつもより少しだけおしゃれをして行ってはみたけれど、バックパッカーだったわたしが入るのを少しためらうほどの存在感。しっかりした扉を抜けると、そこには中世の貴族が好んでいたような優雅な空間が広がっていて、自ずと背筋が伸びたのを今でも覚えている。ショーケースには品のいいケーキたちと、レジの横にはなんともカラフルなマカロンタワー。

慣れない空間にそわそわしながら、案内された席につく。メニューから(バックパッカーに似合わない金額の)伝統的なスイーツの盛り合わせを頼み、大事に、ゆっくり、味わいながら、宿で出会った日本人の旅人と話に花を咲かせた。

歴史あるカフェからも、スイーツが人々の生活とともにあることを実感する。ハンガリーを訪れた際はそんな人々の生活や文化を、お菓子から感じてみてほしい。


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ライツ社
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