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こんな時代に本屋だからできること。フェア「まもるために」開催_広島 蔦屋書店

どうも最近は、みんなが厳しい。
なにかひとつ失敗をしてしまった人、「いわゆる普通」と違う人、悪いことをしてしまった人、間違った人。

必要以上に責め立てるのはなんでなんだろう。

間違ってはいけないのか。少しぐらい迷惑をかけてもいいじゃないか。悪いことをしたのなら、それをちゃんと指摘して、反省して、やり直せるように支援してあげないと、立ち直る手助けが必要なら助けないと。

死んじゃだめだ。生きていてほしい。ひとりぼっちで死んでいくなんて悲しすぎる。助けになる誰かがいるはず。

自分の身もまもらなくては。知っておく事は必要だ。使える手段はできるだけ使おう。備えも必要。

積極的な孤独はいいが、そうでないならあまりよくない。社会と繋がれる方法を探そう。ひとりじゃない。仲間はきっといる。

弱者を助けることこそが政治だと思う。社会があるのはそのためだ。強者と言われる人がいるとすれば、その強者は弱者によって支えられていると知らなければならない。

広島 蔦屋書店で、こんな言葉とともにフェア「まもるために」が7/3から8/25まで開催されています。

フェアを考えた書店員に話を聞きました

このフェアは、中渡瀬さんと江藤さんという書店員のお二人が考えて生まれたフェアだそうです。

ライツ社の営業と知り合いだった江藤さんに、このフェアを実施した理由をお聞きすると、こんなふうに話をしてくださいました。

フェアは、僕ひとりでつくっているわけではなくて、スタッフと一緒にやっています。今回のフェアは、中渡瀬という文芸担当のスタッフからの提案で、そこから一緒に作り上げました。

きっかけは、あの「ひとりで死ね」という発言に代表されるような、世間の空気です。「死ね」じゃなくて「生きてくれ」と言うべきじゃないか、という思いです。

さらには、元官僚の方が自分の子どもを殺害してしまう、園児が高齢者の車の操作ミスによって命を奪われてしまう。そんなことが日常茶飯事になっている今、「まもるために」というキーワードが浮かんできました。

自らをまもる、他者をまもる、子どもたちをまもる、それらの「まもる」に役に立つ本をセレクトして、今まさに、まもられるべき人や、備えるべき人に届けたい、という思いです。

このフェアで、そんな人たちが救われるようにしたいと思いました。

本の知識によって、救われる人はたくさんいると思います。知ることで救われる、他の人の支援を受けるきっかけになる、社会的なセーフティーネットを利用できるようになる。

知ることで孤独じゃないと知ってもらいたい、仲間がいると知ってもらいたい、そんな人達を救おうとしている人たちもたくさんいると知ってもらいたい、ということです。

社会とつながって孤独でなくなることで、防げたことはいっぱいあると思います。

また、中渡瀬さんはHPでこんな言葉を述べられています。

つながってほしい 生きていてほしい

胸が締め付けられるような事件や事故が相次いでいます。
青だった信号に従い横断歩道を渡っていた親子、車道から離れた場所で信号待ちをしていた園児が、車に突っ込まれ亡くなりました。
なんの罪もない人が巻き込まれてしまう理不尽さ。被害者には、身を守る手立てがこれ以上なかったということに呆然としてしまいます。
その後に起きた川崎の事件。スクールバスに乗るため待っていた子やその保護者がふいに背後から襲われました。一瞬すぎて、何が起きたかすら分からなかったでしょう。ごくありふれた日常の中に、突如として襲いかかってくる悪夢のような事態。全くもって他人事ではなく、怖くて震えます。どうやったら命を落とさずにいられるのだろうか、と。
身勝手な凶行は本当に許せないし、被害者のことを思うと辛くてたまらない。けれど、容疑者に対しての「一人で死ね」という声を耳にして、胸がザワザワしました。
かばうつもりなんて毛頭ありませんが、不必要とされた人、絶望の淵にあるであろう人に向かって「死ね」と言い放つこと、そこに更なる恐怖を覚えたのです。
誰も、死んでいいわけないじゃないか。みんな、生きてなきゃいけないじゃないか。
私たちを取り巻く社会は、いったいいつからこんなに不寛容で、優しくなくなってしまったのでしょう。弱者に対して「死ね」なんて言葉を投げかけず「生きよう」と言える社会でありたい。生きていてほしい、生き抜いてほしい、そんな祈りにも似た願いを今回のフェアに託しました。

なかでも2人がおすすめする一冊とは

中渡瀬さんが選ぶ1冊は、『とにかくさけんでにげるんだ わるい人から身をまもる本』ベティー・ボガホールド(岩崎書店)。


他人事ではないといつも思っていたい。当事者として、子どもと一緒に読んで、一緒に考えたい。一緒に話し合って考えて、備えたい。


江藤さんが選ぶ一冊は、『幽霊人命救助隊』高野和明(文藝春秋)。

この本を読むことで救われる人がたくさんいると思っている。だからこそ、多くの人に読んでもらいたい。自分もこの本に救われたひとりとして、確信を持ってそう言えます。

広島 蔦屋書店 フェア「まもるために」7/3から8/25)

日々、スマートフォンに流れてくる悲しいニュースを見ながら、無力さを嘆くだけでしたが、広島の書店で、「本を売る」という自分の仕事で、できることをされている方がいることに、とても勇気をもらいました。どんなときも、何も言わず、ただ孤独に寄り添ってくれるのが本だと思います。

広島に行かれる方は、ぜひお立ち寄りください。

※「ライトな出版業界紙 on note (β)」では、こんなふうに書店の工夫ある取り組みを紹介していきたいと思っています。情報、お待ちしています。ご連絡はinfo@wrl.co.jpまで。



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