2024年10月、ライツ社に新入社員が加わりました。野見山三四郎くんです。すごい名前!お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、「三四郎」は、あの夏目漱石の小説から付けられた名前だそうです。
そこまでして本を読みたいと思うようになったきっかけは……
夏、ライツ社で出版営業職を募集すると、応募フォームに百貨店に勤めているという男性からエントリーがありました。そこに書いてある文章が、なんだかとてもよかった。内容はもちろん、リズムも言葉えらびも、なんだかとてもよかったんです。
すぐに「面接に来てくれませんか?」と連絡をしました。
東京から明石に来てくれた野見山くんは、挨拶を済ますと、机の上にスッと紙の束を置きました。「それは何?」「これは、私が中学と高校の図書室で借りて読んだ本の履歴です」「そんなの残ってるんですか!?」なんと、野見山くんが通っていた学校は、生徒が図書室で借りた本を記録として残してくれていたのです。
びっしりと記載されたタイトル。貸し出しの日付はほぼ毎日。その数は1154冊。本を好きなことは、言わずとも伝わってきました。だから、「野見山さんと本って、どんな関係なんですか?」そんな質問をしました。そしたら彼は、こんな話をしてくれました。
『ガンバのぼうけん』『はてしない物語』『ブレイブ・ストーリー』……1人になりたくて図書室にこもったはずなのに、そこにある本を読んだら、人は1人では生きていけないことを知って。面白い本と出会うと、今度は誰かと話がしたくてたまらなくなった。
そこから、野見山少年は変わっていったそうです。人と話すようになり、友達をつくり、演劇をはじめ、就職活動では、人と話すことが仕事である営業職を選んだ。
出版営業をするうえで、こんなにも強い原体験はないと思いました。
と同時に、1人の少年が本によって人生を変えていくストーリーを聞いて、本のつくり手として、とてもとても励まされました。本をつくり届ける意味は、こういうところにあるんだなって。
そして、この話を聞いてからもう一度、応募フォームに書かれた文章を読むと、ぼくたちはもう野見山くんといっしょに働きたくなっていました。
いま、野見山三四郎くんは新人営業マンとして関西を回っています。
来年の目標は、1人立ち。たくさんの書店員さんにかわいがっていただきながら、教えてもらいながら、本という存在の魅力を伝えることができる営業マンに育っていってくれることを願っています。
期待しています!そして、来年も生きる力の源になるような、そんな本をつくり続けていきたいです。
以上、ライツ社の近況報告でした。それでは、よいお年をお迎えください!