母の日に、恥ずかしくて伝えられない感謝の気持ちを代わりに届けてくれる「広告コピー」
5月13日は「母の日」です。大人になって、カーネーションも買えるようになった。電話の1つやLINEの1通も送れるようになった。でも、面と向かって感謝の気持ちはまだまだ伝えられない。そんなとき代わりに思いを届けてくれるような広告コピーがあります。『毎日読みたい365日の広告コピー』(ライツ社)の中から、お届けします。
「幸せなのは、笑う母を見るわたしの方です。」東武百貨店/ コピーライター:斉藤賢司( ホンシツ)
5月の第2日曜日は「母の日」。アメリカの少女が、母のお墓に白いカーネーションを飾ったことが起源 とのこと。好きな人が喜ぶと、自分も嬉しくなるもの。年を重ね、母が小さく見えるようになればなるほど、「母を喜ばせたい」という気持ちも強くなりますね。今年は、何を贈りますか?
「海も山もある故郷を、なにも無い町と呼んでいた。小さくまとまりたくないと、ふるさとを飛び出して二十年。猫の額ほどの家から、肩をすぼめて電車に乗り、小さな会社の、小さなデスクに通う。そんな未来が分かっていても、あの日の俺は同じ決断をしたのだろうか。夜十一時の居酒屋のカウンター。ひとりで呑むのも、もう慣れた。目の前には、地元のお酒と、地元の名物だった鰯のへしこ。親にはもう5年近く顔を見せていないが、胃袋だけは、こうして毎週帰省している。あの町には、海があり、山があり、魚がいて、酒があった。友人がいて、家族がいて、たしか、恋人だっていた。何も無いのは…思わず、日本酒に手が伸びる。何も無いのは、都会の方だったのかもしれない。少し濁ったお酒を眺めながら、東京でどうしても見つからないものたちを、思う。いつしか手の上のスマートフォンは、新幹線の予約画面を開いていた。」五明/コピーライター:細田高広( TBWA HAKUHODO )
「そういえば、どこからが空なんだろう。」というシリーズもある飲食店のコピーです。場所も人も、離れてみて初めて気づくありがたみがありますね。
「お母さんがお母さんでよかった。
陰影が美しい山脈の手前には、雪原が一面に広がっていた。日本の米所、新潟。優奈さんの実家は、そこで歯科医院を開業している。「一度は、ここを離れて東京へ行ってみた方がいい」両親にそう助言されて、東京の大学に進学した優奈さんだったが、いざ一人暮らしをしてみると、刺激的で楽しい反面寂しいことも多かったようで。一日の終わりには、話があってもなくても母の郁子さんに40分は電話していたという。卒業後は、希望通り実家に戻ってこちらで就職先を見つけた。とはいえ、片道1時間半の自動車通勤で、覚えることが山のようにあり、毎日ヘトヘト。唯一、学生時代のように母が持たせてくれるお弁当と、おいしい夕食に元気をもらっているようだ。社会に出ればいろんな人たちがいる。だからこそ、「今は、この人に育ててもらってよかったなって思います」素直な笑顔だった。」 NT Tドコモ/ コピーライター:塚田由佳( 電通)
2001年からスタートした、ケータイでつながる「あたたかい家族の絆」を紹介するシリーズ広告です。 あとで後悔しないために、どんなに恥ずかしくてもやるべきこと。その1つが、親に感謝の気持ちを伝えることだと思います。
「学校で学ぶことより、一人暮らしで学ぶことのほうが、多いかもしれないね。」ハウスメイト/コピーライター:小林麻衣子( POOL inc. )
「学生さんにぴったりのお部屋、そろってます。」とつづく、住まい賃貸のコピーです。「ずっと一緒にいたいから、ちょっと離れられる部屋もほしい。」というシリーズもあります。引っ越しは「場所の変化」だけでなく、不安や期待を抱くことによる「気持ちの変化」ももたらしますね。
「あなたの思い出す私の顔が、いつも笑顔だといいな。」カンロ/コピーライター:味村真一
「記憶の中にあるその表情こそ、一緒に過ごした時間が、幸せだったことの証なのだから。」とつづく、幼い娘と親の気持ちを描いたコピーです。この思いは親子の関係だけではなく、いろんなシーンに当てはまりますね。
「母親になった娘からの手紙は、「ありがとう」の文字が、照れくさそうにしていた。孫が生まれると、母と娘の関係は、少し変わるのかもしれない。毎日顔をあわせる娘からもらった、あらためての手紙。そこにはいつになく素直な、そして、すっかり母になった娘がいた。「ありがとう。こんな気持ちで、私のことも、育ててくれてたんだね」顔を見たら、きっとお互い、照れくさくて言えない言葉。わたしは、うまく伝えられるだろうか。娘への「ありがとう」を。親子は、ときどき不器用だから。あなたと大切な人の間に、ペンは、いつもいます。」パイロットコーポレーション/コピーライター:姉川伊織( 電通)
「ありがとう」、「ごめんなさい」、 「好きです」……その思いの強さがいちばん伝わりやすいのはいまも、手紙かもしれません。
カーネーションの花言葉は、「無垢で深い愛」だそうです。受け取り続けてきた深い深い愛情を、大人になったわたしたちは、少しずつでも返していけたらいいですね。お母さん、いつもありがとう。
『毎日読みたい365日の広告コピー』(ライツ社)
365日、その日その季節にぴったりの「広告コピー」を並べてみたら、大切なことを思い出せる素敵な名言集ができました。
※ヘッダー写真:AnastasiaNess@shutterstock.com
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