「焼く前のクッキー生地をそのまま食べちゃう」あれ、カナダではおしゃれな名前がついてた|世界のお菓子(食)を巡る旅#17
カナダでコーヒーのお供といえば、焼き菓子だ。
「焼き菓子」と一言にしても、フランス菓子とは大きく違って、みんながイメージするような「アメリカらしい」ものが多い。とにかく甘い、カラフル、でっかい、大味。すくなくとも、わたしはそんなイメージだった。
実際にフランス菓子のような繊細さも、芳しい発酵バターの香りもないが、北米のお菓子は母親が子どものためにつくるホームメイド感がたっぷりだ。シンプルな材料で、細かいことは気にせず、簡単に効率よくつくれるものが多いように思う。
つまりは、ママの味。
特におもしろいのがクッキー。日本でクッキーといえば一口サイズが一般的で、食感はサクサクしたものが多い。しかし、北米ではそのタイプのクッキーを見つけることは少し難しい。たいてい、手の平サイズくらいに大きくて、平べったく、すこしソフトでしっとりなものが多いのだ。
そしてもう一つ。
アメリカやカナダの人たちは、焼く前のクッキーの生地をそのまま食べるのが大好き。現地では、あの背徳感ある(でも美味しい)つまみ食いに「クッキードウ」という名前がついて、一つの文化になっている。
小さい頃、お母さんがつくるクッキーやホットケーキの生地を待ちきれなくて焼く前につまみ食いした経験は、わたしたち日本人にもきっとあるはずだ。
「クッキードウが大好きだから一口そのままくれないか」。
カナダのカフェで働いていたときも、クッキーを成形しているときに、お客さんから言われたことさえある。
日本には売っていないけれど、あのハーゲンダッツからも「クッキードウ入りのアイス!」が売られていたり、近年では「クッキードウ専門店!」まで出てきていて、新たなブームを巻き起こしているから驚きである。
と、調べると、去年に日本でもクッキードウを売りにしたお店が原宿にオープンしたことを知り、衝撃を受けた。
ちなみに、生卵は使わずドライのものを、小麦粉も加熱処理をしているものを使っているのでお腹を壊す心配はないらしい。これからどこまで日本人に受け入れられるのか、気になるところ。
最後にカナダの名物お菓子をすこしご紹介。
「デーツスクエア」(ナツメヤシの実とオートミールのお菓子)と呼ばれるもので、カナダで人気のコーヒーチェーン店やクラシックなカフェでも目にする人気の郷土菓子だ。
つくり方を簡単に説明すると、
オートミールに砂糖やバター、小麦粉、バーキングパウダーを混ぜ、そこにすこしやわらかくしたバターを加え、さっくり混ぜる。そぼろ状にしたものを型に敷き詰め、その上にデーツペーストをのせ、再び上からそぼろ状の生地のせて焼く
というシンプルなものである。
「デーツ」は日本のあんこに似ている。甘さとねっとり感。バターが香る生地と、相性もいい。素朴な味わいだけれど、コーヒーと一緒にカナダを感じられるお菓子のひとつだ。
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