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サイボウズとライツ社で、出版事業「サイボウズ式ブックス」を始めます

11月7日(木)、サイボウズ式ブックスより『最軽量のマネジメント』山田理が出版されます。

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「サイボウズ式ブックス」とは、グループウェア大手「サイボウズ」とベンチャー出版社である「ライツ社」が提携した立ち上げた出版事業です。

サイボウズからの公式リリースがこちらです。

今回は、サイボウズからの公式リリースとは別に、立ち上げの経緯をまとめながら、ライツ社から見た、つまり出版業界から見た「サイボウズ式ブックス」という取り組みの可能性を話したいと思います。

「サイボウズ式ブックス」がやりたいこと

多様な個性を押し殺してしまうのではなく、むしろ、個性が発揮されればされるほどに相互作用が生まれ、おもしろいアイデアが飛び出すような、働く楽しさに満ちた「チームワークあふれる社会」をつくりたい──。

そんなビジョンを実現するため、これまでサイボウズは22年間、グループウェアの開発や、自分たち自身の会社の人事制度改革など、さまざまな取り組みをしてきました。

そして、その考え方を伝えるため、2012年にオウンドメディア「サイボウズ式」を立ち上げ、7年にわたって情報発信を続けてきました。

そして、さらに、その先へ──インターネットという媒体で届けられる限界を超え、もっと多くの方々に、サイボウズが大切にする価値観を届けていくためには、どうしたらいいのだろうか。そこでより深く、長く、濃く伝えていけるメディアとしてサイボウズが選んだのが、「本」でした。

なぜIT企業が、いま「本」を選ぶのか?

はじまりは2年前の2017年。サイボウズのコーポレートブランディング部・部長の大槻さんがライツ社に「自分たちで出版事業をやりたい。一緒にやってくれませんか?」と声を掛けてくれたことが始まりでした。

なぜIT企業が、いま「本」を選ぶのか? 

大槻さんは、東京の日本橋から明石にまで来てくださり、大きく3つの理由を話してくれました。

1つは、単純に大槻さんが本が大好きだったこと。

もう1つは、サイボウズに中途入社した社員に対してアンケートをとったとき、「サイボウズへの応募を決めたきっかけ」で、「社長の青野さんの本を読んで」という理由が1位になったこと。これで、本というコンテンツが持つ影響力を実感されたそうです。

そして最後の理由が、出版社としてはとても面白いものでした。

「IT企業が、なぜ原価や在庫を抱える出版事業を選ぶんですか?」と質問すると、大槻さんは、こんなことを言ったのです。

いまやGoogleやFacebook、Twitterは『混雑した有料道路』なんです。

インターネットやSNSは、伝えたいメッセージを伝えたい人に届けられる「最短で最速の道路」のはずでした。しかし、いまやそこには情報が溢れかえり、簡単には届かなくなり、なのにコストはこれまで通りかかる道路になってしまった。同じだけコストがかかるなら、「場合によっては、本の方が届く可能性がある」というのです。

「インターネットとSNSの普及により出版は終わった」という話を、何度も耳にしきました。でもここに来て、その最前線にいるIT企業が、自分たちのメッセージを届ける手段として、「本」を選んだというのです。

さらには、スティーブ・ジョブズの言葉を引用して、こんな話もしてくれました。

「Appleの伝えたいことを直接伝えられる場所があることで、Appleの価値は最大化する。つまり、サイボウズの伝えたいことを直接伝えられる場所の1つに、書店という存在がある、ということです」

出版業界の人こそ、「出版不況」という言葉を聞きすぎて、自分たちの可能性を信じれなくなっている。業界の外にいる人こそ、出版の可能性を感じている、信じてくれている、と感じさせてくれた、とても嬉しい言葉でした。

「意志のある」出版事業のはじまり

ライツ社は、「サイボウズ式ブックス」を意志のある出版事業のはじまりだと認識しています。

実はこれまでにも、出版業界とは異なる大企業が出版事業に参入する、という事例はありました。バブル期のことです。大企業に広報予算が潤沢にあった当時は、出版業界の売上の全盛期とも重なります。しかしそれは、単なるPRの一環でしかありませんでした。当然、そのような本は売れず、軒並み大企業は出版から手を引いていった、と聞きます。

「サイボウズ式ブックス」立ち上げの理由は、バブル期のそれとは異なります。単なる広報事業の一環ではなく、サイボウズがつくりたい社会を実現するための、意志のある出版事業です。

多様な個性を押し殺してしまうのではなく、むしろ、個性が発揮されればされるほどに相互作用が生まれ、おもしろいアイデアが飛び出すような、働く楽しさに満ちた「チームワークあふれる社会」をつくりたい──。

そのための本を、年に数点、丁寧につくり、出版していこうとしています。

この動きが、また別の業界と出版社が提携し、意志のある出版事業が始まるきっかけになれば、嬉しく思います。

サイボウズ式ブックスは「掛け率50%」です

「サイボウズ式ブックス」は、届けたいメッセージを伝える場として書店の可能性を信じた事業です。ですので、この出版事業で利益が生まれるのであれば、それはできるだけ書店に還元したい。出版業界の長年の課題である「書店粗利の底上げ」です。

その方針のもと、ギリギリまで書店に還元するには……サイボウズとライツ社、そして取次(卸)各社と調整を重ね、サイボウズ式ブックスから出版される本は「掛け率50%」で卸すはこびとなりました。

ある書店のバイヤーからはこんな言葉をいただきました。

業界の改善につながるモデルケースとなり、他企業が同様のスキームで出版業界に参入することも期待したい。第1弾となる本も、働き方改革に戸惑う中間管理職に刺さるはず。

第1弾『最軽量のマネジメント』も、書店から予想をはるかに上回るご注文をいただき、初版13,000部からのスタートとなりました。業界平均の約2倍の数字です。

最後に、サイボウズ大槻さんの言葉を紹介します。

ただ、「意志がある」といっても、いち企業が言いたいことを言うだけの本を作るなら、これもまた単なるPRと変わりません。
サイボウズは「サイボウズ式」というオウンドメディアを7年間運営しながら、その間もずっと、PRとは異なる「読み手にとって意味のある情報発信」の姿勢を貫いてきました。その姿勢は、出版事業においても変わりません。
はたらくを、あたらしく。
いまの時代の枠組みの中でうまくやる方法を伝えるのではなく、新しい枠組みをつくり出すための本をつくっていく。
それが「サイボウズ式ブックス」のやりたいことです。

IT企業が出版事業に参入すること、グループウェア大手の上場企業と小さなベンチャー出版社が提携すること、掛け率50%……。挑戦ばかりですが、この取り組みが出版業界の1つの明るいニュースになることを願って、全力で取り組みます。



出版業界を新しくしたい。もっと良くしたい。読者と、書店と、友達のような出版社でありたい。「本ができること」を増やしたい。いただいたサポートは、そのためにできることに活用させていただきます。