秋伸びする植物|平屋私庭日記#28
植物が秋伸びを始めた。「秋伸び」、聞き慣れない言葉かもしれないけど、僕にとっては「食欲の秋」ぐらい秋を感じる言葉なんです。今回は秋伸びについてのお話を。
秋伸びする樹木
秋に樹木が伸びることを知ったのは数年前のこと。庭のお手入れ先でふと新芽がぴょーんっと伸びていることに気がついた。
それまでの僕は春に勢い良く伸び始めた枝葉はだんだんと速度を緩め、秋には失速し紅葉を待つだけだと思っていた。
なのにどの樹木たちも秋にシーズン最後のひと伸びをしている。このことを知った時は衝撃だったなぁ。
秋伸びに気づいてから、僕の中で秋の成長注目度がカナリ上がる。寂しくなるイメージもあるけど樹木たち的には秋芽を伸ばしたり果実などの熟成と大忙しな季節なんだろうな。
樹木は季節によって枝葉の伸び方がある。日本には四季があるので4つはすぐに思いつくと思う。僕はそれ以外にも分けていくことが出来ると思っていて、一年で6つの動きがあるかなと。
6つの季節
❶3月下旬から5月。
春芽。蕾が開き最も成長する。ぐっと成長した後、5月下旬から一度おとなしくなる。
❷6月7月。
夏芽。梅雨入りと共にぼちぼちまた伸び始める。春先ほどの動きはない。
❸8月。
暑さをしのぎたいのか枝葉を伸ばしている様子が感じられない。一休みという感じ
❹9月10月。
秋芽。暑さが和らぎ、冬に入る前の最後のひと伸びを始める。
❺11月12月。
落葉樹は落葉し葉や枝伸びの動きはなくなる。
❻1月2月。
落葉樹は枝先のつぼみをゆっくり膨らませていく。
樹木は枝葉を伸ばしていく行為が、大きく分けて❶春先と❹秋の2回。❷夏芽もあるがそこは春の延長線と考えていいと思ってる。
このことについて調べたいけどあまり文献にはのってないみたい。職人たちや卸屋さんで秋伸びのことは良く耳にするから、現場の方々がもってる共通認識なのは間違いないはずなんだけどなぁ。
平屋の秋芽
春の写真ではなく1週間前に撮影したレモンの新芽。柔らかな新芽がどんどん芽吹いてくる。
ただ春と伸び方が違う木々もいてて
コバノズイナは秋にぴよーんとまっすぐ上に成長する。正直なぜかは分からないけれど、他にも秋にこういう伸び方をする樹種はある。春の伸び方はここのところが違うように感じるなぁ。ちなみに春は地面に平行に近い方向に伸ばしていくイメージ。しっかり樹形をつくっていってる感じかなぁ。
夏に大人しかった樹木たちが秋芽を出し始めたのは、単純に動きやすい気候になったからだと思う。動ける気候のうちは成長したいんだろうな。
誰かこのことについて書いていないかと本を探すも出てこず、僕がエディブルガーデンの先駆者として敬愛する辰己芳子さんの四季の本なら書いているのではないかとさぐってみるも見つからない。
辰巳芳子さんの庭の時間。エディブルガーデンをつくり収穫し食べるまでを手加減なしでされてる方。オススメ本です!
んーん。学者さんや研究者さん、基本庭業ではない人から見る本や文献はあるんだけど、職人が書いた本というのはなかなか無い。あっても技術か歴史、精神的なお話が多い気がするなぁ。
もうちょっと庭師のエッセイや日記の本があるといいのですが。。
虫に葉っぱを食べられすぎてボロボロに見えるジューンベリーも秋芽を出している。ちょっとバタバタして庭を見れなかった間に葉っぱほぼ食べられちゃいましたね。。
秋伸び
秋芽を伸ばす樹木たちが僕にとっては収穫や衣替えの知らせになっている。
樹木によってはこの秋芽が来春の花芽になったりするので、これからの季節の剪定は樹種によって切り方を変えないといけない。そこには樹形と花芽のバランスがあるので僕たちにとってより難しいところになってきます。
ブルーベリーやジューンベリーは枝先にしか花芽が付かないから出来るだけ残しておいた方がいい。けど、レモンやサクランボ、スダチは中間枝に花芽が付くし、成長を少しとめて花芽に力が行くように切っておきたいところ。
それぞれ花芽がつくところは違ってくるので気をつけておかなければならない。
毎年繰り返される樹木たちの成長と職人のお手入れが、ちょっとづつ僕に知識と経験を身につけてくれる。今年の秋芽はどんなことを教えてくれるかなぁ。
定点写真#28。今年の収穫は残すところアルプス乙女リンゴだけと思っていたら、スダチが一つなっていることに気がついた。この数ヶ月全く気がつかなかったなぁ。楽しみが増えて嬉しいなぁ。
GREEN SPACE 若手庭師 中山 智憲
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