【画家本人による解説】ベスト作品集『REMEMBER』に込められた想い
ライツ社から発売された、海の砂の上に絵を描く画家・たなかしんさんの画集『REMEMBER』。大阪・阪急うめだ本店での展覧会では過去最高点数の原画が展示され、好評のうちに会期を終えました。
12月18日(水)からは、東京・丸善日本橋店3Fギャラリーで今年最後の展覧会を迎えます。そこで、阪急うめだ本店で行われたギャラリートークの内容をお届けいたします。
たなかしんさんが絵に込めた想いはもちろん、キャンバスに海の砂を使っている理由や、全財産を使った展覧会の話など、他では聞けない話も丁寧に語ってくださいました。
でき上がった画集を見せながら話をする、たなかしんさん
『REMEMBER』は“繰り返し贈る”という意味
こんにちは。たなかしんと申します。
絵本作家であり、画家です。
『REMEMBER』、僕は今年で40歳になったんですが、これは僕の画業20周年を記念して作った画集です。REMEMBERっていう言葉には“繰り返し贈る”っていう意味があるそうです。それで僕の作品を今まで応援してくれた皆さんや、これから知ってくれる方にも、何度もこの本を開いていただきたいなっていう思いを込めて『REMEMBER』っていうタイトルをつけさせていただきました。
落ち葉は再生の象徴
この作品集には僕が20歳ぐらいのころの作品から載っています。これは「ワスレモノ」っていうタイトルです。このころは学校を卒業したてのころで、卒業後は服屋さんで働きながら絵を描いていました。ただ、学生時代の借金がものすごくて。
実は僕の家はあまりお金に余裕がなくて、その芸術学校に行く入学金や、1人暮らしの頭金や生活費、学費、あと画材とか、全部自分で準備をしたので、卒業するころには借金が360万円ぐらいありました。20歳の自分にはちょっと大きすぎる借金でした。
とにかく働いて、細々と絵を制作して、発表する機会を作りながらも、借金を返して、、、。そういうことを繰り返したからか、不安症とか神経症になってしまって、電車一駅も乗れないような時代がありました。
そんなときに描いたのが、この「ワスレモノ」です。僕の中で落ち葉に込めた思いがあったんです。それは、落ち葉って緑の葉に比べると地面に降り積もって、枯れてしまったイメージがありますよね? でもそれで終わりじゃなくて、その落ち葉が年月をかけて腐葉土になったりして、また新たな芽が出る力になる。栄養となって次に生かされる。そういう思いを込めて、この「落ち葉」のシリーズを描いていました。
この絵は越後湯沢の絵のコンテストに出展して、優秀賞をもらいました。初めて自分の絵が買い上げられたんですよ。絵でやっとお金になった。もしかしてやっていけるんじゃないかっていう希望の光みたいなものが見えたときでしたね。
自分が好きだったものを一からまた描いていこう
ここに「拝啓ピカソ」っていうシリーズが描いてあります。僕は、小学校のときにピカソが大好きでした。ピカソの何が好きかって、ピカソの考え方が好きやったんです。このおもしろそうなおじさんが絵を自由に描いている。
例えばキュビスムみたいな絵や、子どもが描いたような絵も描いているし、
すっごいリアルな鳩の絵を描いている。さらには壺やお皿みたいな立体も作っている。この人はすごい楽しんで絵を描いてるなって思ったんですね。
こんなに好きなことをして生きてる大人がいるんだって、小学生の僕には衝撃でした。で、いつか自分もこうなりたいなって、僕はピカソがすごい好きになって、小学校のときにピカソの模写をしたりしていました。
それで「拝啓ピカソ」なんですが、大人になってから自分が「落ち葉」のシリーズを描いたあとに、また自分が原点に戻って、自分が好きやったものを一からまた描いていこうっていうところから、「拝啓ピカソ」って、ピカソに宛てたお手紙のようなつもりで描いた絵です。
目は口ほどに物を言う
これが「eyes」というシリーズです。日本には「目は口ほどに物を言う」という言葉があります。僕の絵をご存知の方は知っていると思いますが、僕の絵は目に力を込めてるんですね。そうすることによって、皆さんの心に直接に語りかけられるんじゃないかと思っています。
そして、絵と向き合ってるつもりが自分の心と向き合って、自分の心の中の隠れた気持ちや本心、そんなものに気づいてもらえたらいいな。そんな思いを心の底に持ちながら、すごく目に力を入れて描いてます。なので「eyes」っていうテーマでいろいろ描いていました。
いろんなものが愛を持っていて、いつか自分のもとに来てくれる
これらが「HAPPY BIRTHDAY」っていう個展名で、ハイアットリージェンシー大阪で展覧会をさせてもらったときの作品群です。
展覧会のあと「すばらしきこのせかい」というタイトルで絵本形式にまとめました。これらの絵はよく見ると、世界中に散らばった動物やお友達が、プレゼントを持っています。リンゴを持ってたりとか、笹を持ってたり、ユーカリを持ってたり。世界中からお祝いの気持ちを持って集まってきてくれてる。
彼らは多くが人間ではないんです。僕は人間に何かを求めすぎてしまうと寂しい気持ちになってしまうんじゃないかと思っています。人間には人間としてのそれぞれの思いや考えがあって、思い通りにはならないことを受け入れることができなかったり、許せなかったりします。どこか諦めきれないんでしょう。
だけど、みんなちゃんとあったかい気持ちを持っていると信じています。そして、自分さえその気持ちを受け取る準備ができていれば、いつでも受け取れるんじゃないか。そういう風に思うんです。
この世界のいろんなところで、まだ出会ったことのない人や、これから出会うかもしれない人。自然や風や太陽、いろんなものが愛を持ってこの世に存在していて、いつか自分のもとに来てくれる。そんな気持ちを込めてこの作品を描きました。
僕が海の砂を使っている理由
この絵は「もみじ」という作品です。ガラスビーズを置いて、その上にティッシュペーパーを張って、指で模様をつけて、和紙みたいな雰囲気をつくってから油絵の具で描いています。そうすると本当に和な感じが出てすごく面白かったんですね。
そうやって自分の表現を人に伝えるためにはどうするのが一番いいのかっていうのをまだ模索してる時期でした。今は海の砂を使っているんですが、その理由をお話しします。
僕が生まれ育ったのは大阪の泉南市っていう海沿いの土地で、関西国際空港のまだ少し南にいったところ。僕がちっちゃいころは干潟のすごいすてきな海が広がっていました。そのときの記憶が頭のどこかに残っていて、模索してるときに、頭の中に潮の香りというか、そうだ、海があるじゃないかって浮かんだんです。
そのとき(今もですが)住んでいたのは兵庫県の明石で「そうだ、明石の海に行こう」と思って、海の砂を触った瞬間に、「ああ、これだな」って直感的にわかったんです。
なぜならその海の砂には、山から砂や岩の砕かれたものが川をずっと下ってきて、海にたどり着いている。そして、サンゴや貝殻、海の中の命の結晶みたいなものがたくさん波打ち際に寄せられている。その、さらに波打ち際の一番上のさらさらの部分をすくい集めて、これで描こうって決意しました。
どうやって絵に使うかというと、まずは集めた砂を洗って塩抜きをします。絵を描いてから何年かして塩で真っ白になったら困るので。でも「抜く」という作業で終わるのは残念なので、一度洗った砂をすべて天日干しをしています。太陽のエネルギーをまた砂の中に入れて。エネルギーがたくさん集まった状態で、それをキャンバスに張り付けて、その上から描いてます。
なぜそんな手間のかかることをするかって? そうすることによって地球が持ってるぬくもりとか、星が持ってるぬくもり。そんなものも一緒に絵の中に入ったらいいんじゃないかって、祈りのような気持ちで、絵に力を貸してもらっているんです。だから僕の絵を見て、あたたかい気持ちになってくれたらうれしいなと思いながら、いつも描いています。
少年のころの自分がいるおかげで今も生きられる
この絵は、長野県岡谷市にある「イルフ童画館」が主催している「日本童画大賞(イルフビエンナーレ)」で入選した作品です。この「Zooっと一緒」という作品は頭の中にいる動物たちがずっと一緒にいる、という様子を描いています。
僕に限らず、みなさんの中にも「こどもの自分」が隠れていると思うんです。もちろん、大人だから大人っぽくしなくっちゃって思ってる人もいるかもしれないけど、自分の中のこどもの部分って自分の原点で、パワーをくれてるような気がするんです。
こどもの頃の僕は動物がほんとうに大好きで、よく迷子になってる動物とか、死にそうになってる猫とかを拾ってきて親に怒られました。そういったこどもの頃の思い出がみなさんの心の中にもきっとあって。そういうのがあるから皆さんも夢を持って生きられたりとか、つらいときにでも励ましてくれるかもしれない。
少年のころの自分がいるおかげで今も生きていられるというか。そういう大事なものをずっと持ってたいねっていう気持ちで描いたのが、この絵なんです。
全財産100万円をかけた展覧会
そのあとが「ゆめごこち」っていう作品です。このころは僕がまだ借金もたくさんあって、絵でもまだそんなに食べてもいけないし、どうしようかなっていう時期。
たまたま表参道ヒルズのギャラリーと知り合うきっかけがあって、声を掛けていただきました。「チャンスが来たな」と思ったんですが、そこはレンタルギャラリーで、お金を払わないと展示ができないんです。送料やいろんなものを含めると100万円ぐらいかかる。そのときちょうど僕の全財産が100万円。借金がまだ200万円ぐらいあるんです。
どうしよ。これ全部使ったら僕はあしたから生きていけるかな? でも、そのギャラリーはあの表参道に面した場所で、その前を毎日何万人も人が通ります。そんな場所で展覧会を開けるチャンスがもらえた。これは100万円をかける価値があると思い「やります」と答えました。
「ゆめごこち」っていうタイトルは、お金のことはとりあえずもういいやと思って。来てくれたみんなに夢心地になってもらおう、夢を持って楽しく帰ってもらえるような環境をつくろうと思ってつくった作品たちなんです。
始まってみると、たった1週間の期間に信じられないくらいたくさんの人が来てくれたんです。表参道を歩いている人が「きゃー、かわいい」って言って、入ってきてくれるんです。ほんとにもう会場中が人で埋まるぐらい来てくれました。全然有名でもないのに「サインください、サインください」って言ってくださって。僕の名前じゃなくて絵を見て僕にサインをお願いしてくれたんです。
結果的にこの展覧会にかけた100万円もちゃんと返ってきて、ギャラリーからも「来年もお願いします」って言ってもらえて。まるでこちらが夢の中にいるような気持ちで、その1週間を過ごさせてもらえて、ほんとに素敵なきっかけをもらえた展覧会でした。
僕にとってのヒーローは寄り添う人
次が「HEROES」っていうシリーズです。ヒーローっていうのはだいたい敵を倒すんです。アニメとか見てても、ヒーローものの戦隊ものとか見ててもだいたい戦っていますよね。でも、僕としては戦うよりも、仲良くしてほしいんです。
例えば、つらい気持ちの人や弱っている人がいたら、その人の横でその人の話を聞いてあげたり、その人の涙を拭いてあげれるだけで、その人にとってはヒーローなんじゃないかなと思って。画集にはこう書いています。
ヒーローとはどんな存在だろうかと考えたとき、寄り添ってくれる者と答えたい。
敵と戦ってくれるわけでもなく、誰かを倒すわけでもない。誰も傷つけず、ただそっと寄り添い、心をぽっと温めてくれるような存在。
そうなりたいという願望かもしれない。みんなのヒーローになれなくても、誰かのヒーローにはなれるかもしれない。きっとみんなそう。
そうであってほしい。
ヒーローってそういう存在でありたいな。そういう絵であってほしいなと思って、僕は「HEROES」っていうシリーズで絵を描きました。
絵と人との関係は鍵と扉みたい
次が「Key」っていうシリーズです。僕は、絵と人との関係っていうのは鍵と扉みたいな関係にあるんじゃないかなと思っています。
どの絵も素晴らしいという方もいれば、やっぱり自分に相性のいい作品があったりして。ある絵に出会ったときに、この作品はほんとに素晴らしいっていう、心にガチャリとはまるような瞬間があると思うんですね。そんな心の鍵を開けてくれる絵を描きたいなと思って描いたのが「Key」っていうシリーズです。
人が人に与える印象
次が「PORTRAIT」っていうシリーズですね。僕はよく動物を描きます。動物にはそれぞれ持っている性質があると思っていて、例えば猫の絵はちょっと自由気ままに見えたりとか、犬の絵はすごい忠実に見えたりとか。
人間にもそういうそれぞれの個性があって、それぞれが相手に与える印象も異なります。それが肖像っていうものになった瞬間に、きっと明確なメッセージとして伝わるものがあると思うんですね。それが、この「PORTRAIT」っていうシリーズで描いた作品です。
この作品たちはほとんどがお客さまのもとに旅立っていって、画集でしか見れないので、ぜひ画集でご覧になってください。
絵を描くことは祈りに似ている
これは、「守り神」っていうタイトルで描いた大きな猫の絵ですね。自分の長男が産まれるときに描いた作品でして。男っていうのはほんとにふがいないもので、なんにもできないんですよ。無事産まれてきてくれよって祈ることしかできない。
だからせめて自分の絵で、その生命が誕生するっていうことをお祝いするような絵を描きたい。その守護神のような絵を描きたいなと思って描いたのがこの作品です。おかげさまで無事元気に生まれて、今暴れ回ってますけどね。
ほんとにもしかしたらこういう絵の力っていうもの、祈りの力っていうのは何かに届いてるかもしれないなっていう思いで描いた作品です。
絵に込められたストーリーを想像して
次が「STORYS」というシリーズ。
僕の絵は物語性をすごく大事にしてるんですよ。このシリーズで描いた作品には一点一点にストーリーがこもっています。1枚の絵でも、これは一体どういうストーリーで描かれたのかなっていうのを想像しながら見てもらえると、より自分の心の中で物語が膨らんで、面白く見てもらえると思います。
優しさは伝染するんです
これは「聖なる者たち」というシリーズ。画集にはこう書いています。
誰かにとってかけがえのないものは、神様に近い。
この世に存在するありとあらゆるものが神聖さを帯びている。何かを見るとき、ふとそんな風に見てみると、世界はガラッと表情を変える。
花壇に居座る猫は神様の使いに見えるし、サーカスのピエロは死神にだって見える。愛する人は天使に見えるし、異国の苦しんでいる子が聖職者に見える。救えないぼくはただの人間であることを思い知る。
だからせめて耳を傾ける。見逃さないように、聞き逃さないように掬う。
表現することは種まきに近い。いつか受け取った誰かが花を咲かすかもしれない。それが奇跡を起こすかもしれないと、他力本願に描くのだ。
と書いています。みんなそれぞれ大事にしているものがあって、それは神様に近い存在なじゃいかなと思っています。そういったものを絵で表現することによって、もしかしたらその誰かが救われるかもしれない。そしてその救われた人がもし、その1人が優しくなることによって、その周りの人も何人も優しくなれたら。
僕は優しさは伝染すると思ってるんです。その優しさが伝染してほしいっていう思いもあって、その「聖なる者たち」っていうテーマでいろんな聖なる者を描かせてもらいました。
愛か恋か
このシリーズは「愛か恋か」。本にはこう書いています。
愛は命を紡ぎだし
恋は命を輝かす
ぼくはあなたを愛していて
今日もあの子に恋をする
世界に溢れる絵や音楽
恋するように憧れて
愛することで救われる
今日出会う一枚は
きみのための愛か恋
愛か恋かっていうのは、ある意味究極の話というか、人間が生きてることの永遠のテーマのようなところがあると思うんです。
こちらも読んでいいですか? 「すべて大切な命」。
世界は愛でできている
大きな命も小さな命もすべて一つの不思議な命
大きな愛も小さな愛もすべて一つの同じ愛
すべてで一つ
一つですべて
海も空も地上もすべて
一つの星のすべての命
愛っていうものは、さっき「HAPPY BIRTHDAY」でも話したんですけど、人間だけに求めると行き詰まってしまうものだと思うんです。
人間っていうのは、生まれた瞬間っていうのは愛そのものだと思うんです。だけど、だんだんエゴが出てきたりとか、成長するにしたがって負の部分とかも出てくる。
でも、それでもやっぱり人間っていうのは、僕は愛そのものであってほしいと思うんですね。愛があるから人に愛を伝えられるし、愛があるから人を癒やすこともできるし。人と人が愛を紡ぐことによって新たな命につながっていくんじゃないか。そういうことで「愛か恋か」っていうテーマで描きました。
「友達になろう」の一言で世界は救える
こちらが「銃なんていらない」っていうテーマで描いた絵です。これはいつか絵本にもしたいなと思っているシリーズです。絵だけでも十分メッセージとしては伝わるんじゃないかな。武器をすべて植物に置き換えています。武器をこの植物に置き換えることによって、世界中から武器がなくなってしまえばいい。
さっきも言ったけど、僕は、ヒーローは誰かを倒すことによって生まれるんじゃないと思うんです。両手を広げて「友達になろう」。この一言で世界は救えるんじゃないかなって思うんですね。そういったことを描かせてもらいました。
未来へ向けてのメッセージ
次が「アスミルヒカリ」っていうタイトルで描いてます。この詩もちょっと最後に読ませてもらいますね。
足音は前をゆく うつした景色は心のなかで ぬくもりは消えず いつまでも明日をてらす やさしい夜がつつみこむように ひどい今さえ変えてしまえるように
今 踏み出した足は 昨日出せなかった一歩でしょう 今 叫んだ言葉はずっと溜め込んだ思いでしょう 今 流した涙は 明日のための希望でしょう
ああ しっている しっている きみはだれよりもしっている ぬいぐるみは汚れても ペンのインクが切れてても 題名だって忘れても 月が欠けてなくなっても 明日見る光は消えやしない
思い描いた世界まで たどり着ける足音が きみの心にこだまする 明日見る光がよんでいる
これは未来へ向けてのメッセージです。幸せっていうのは自分の心が感じるものなんです。だから心が病んでしまったり落ち込んでしまったときっていうのは、どうしてもその幸せを感じることができなくなってしまう。
そうなってしまうとどうしても、何があっても幸せと思えなくなってしまう。だから明日、明日っていう世界を素晴らしいものにするには、まず自分が素晴らしいことを素晴らしいと思える心を取り戻そう。そんなメッセージがこもっています。
この『REMEMBER』という画集には、こうして今までお話しさせていただいた作品と、たくさんの思いが詰まっています。どうぞ手にとって、気に入ってもらえたら買っていただけると嬉しいです。
ライツ社とは徒歩20秒の距離
実は、僕のアトリエと、ライツ社さんの事務所は徒歩20秒のところにあったんです。2年間それを知らずにいて、今度個展をする、東京の丸善日本橋店の店長さんから、明石に面白い出版社があるってお聞きしたんです。名刺の住所を見たら、なんとアトリエのすぐ裏だったんです。ぱっと振り返ったら見えるぐらいのところにあって。
そこから、たなかしんさんの作品が出したいっていうことで、頑張っていい作品集作りますって言ってくださって、この本ができました。
この画集は、今まで僕が描いてきた何千枚っていう絵の中から230枚ぐらいを選びました。でも、最初は100枚ぐらいの予定やったんです。シンプルに絵を載せるのは、もちろんかっこいいけど、でも、もっと僕らしさを出したほうがいいんじゃないかっていう話も1年ぐらいかけて話し合いをしました。
結果、作品点数が230点、ページ数も大幅に増えました。これは正直、ライツ社さんに負担をかけているんです。僕はほんとに感謝してもしきれないぐらいライツ社さんには感謝してて。
表紙の紙のザラザラした質感も、まず僕の作品を買ってくださって、その絵を研究してくださって。どうやったらしんさんの絵みたいになるんだろうって、この紙を探してきてくださって、この、僕の砂の絵のような表紙ができました。
絵のそばに書いた文字も、初めはフォントの予定でした。それは見やすいかもしれないけど、ぬくもりを与えるにはもっと手書きでいいんじゃないでしょうかと提案してくださって、こうしてたくさん手書きの文字が入りました。
たなかしんベスト作品集『REMEMBER』出版記念展
場所:丸善・日本橋店3F
会期:2019年12月18日(水)〜12月24日(木)※催し最終日は17時閉場