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「幻の砂糖」パームシュガーの工房を訪れて_カンボジア|世界のお菓子(食)を巡る旅#4

2017年12月25日、世間がクリスマスで賑わう中、わたしは空港にいた。向かった先はカンボジア。アンコール・ワットで有名な「シェムリアップ」ではなく、そこからずっと南の「カンポット」という街へ。

理由は、わたしが世界一周していた当時、ネパールで宿を経営していた大好きな家族が、カンポットでPlant basedのカフェ(菜食主義のカフェ)を営んでいて、滞在しながら勉強させてもらいたかったからだ。
独学でベジタリアンの料理やお菓子づくりを学んだとは思えない彼らのセンスには、ネパールで宿泊していた時から脱帽していた。

ジャンキーなものも大好きな自分が、不思議なほど年齢を重ねるたびにナチュラルで健康志向なものに興味関心が向いていく。特に、つくり手として「周りの人たちには健康でいてほしい」と感じるようになったことで自分が歳を重ねたことを実感していた。

「つくれるものはなんでも自分たちでつくる」
「余計なものは持たない、使わない」

こうしたこだわりを持っているその家族と、ある日パームシュガーの工房を訪れることになった。

パームシュガーとは「ココナッツシュガー」とも呼ばれる、ヤシの木の樹液や花の蜜から採取できる天然のお砂糖のこと。
日本で主流となっているのは白砂糖。日本の多くのケーキ屋さんがこれを毎日、大量に使っている。ただ、実は精製する際に元々含まれるミネラルやビタミンが取り除かれて栄養素を失っているため、自然なものとは言えないのが事実なのだ。
一方で、カンボジアやタイなどの東南アジア、アフリカやカリブ海周辺国はヤシの木が豊富なため、パームシュガーが庶民の間で親しまれてきた。そんなパームシュガーの中でも、カンボジアの砂糖は特に質がいいという。

「ここだよ」と案内された場所は、工房とは言いがたい、ヤシの木に囲まれた家の一角に備えられた小さな作業場だった。

家族で工房を営むその場所では、旦那さんが集めたヤシの花の蜜を奥さんと娘さんが大きな鍋で煮詰めていた。
煮詰めるほどに工房には甘い香りが広がり、慣れた手つきで煮詰め具合を見て火から下ろす。そこから空気を含むように、年季の入った手作りの装置で冷ましながら撹拌。空気を含んだ砂糖は少しずつ白く、粘度を増し、最後は木べらで混ぜながら仕上げていく。

わたしは今まで、パティシエとしておそらく1000kg以上の砂糖を使ってきたけれど、恥ずかしながら砂糖のつくり方はまったくといっていいほど知らなかった。古典的な方法で日本では考えられないほど手間暇をかけつくられていく砂糖に衝撃を受け、感動しながら見ていると20分もしないうちに、パームシュガーが出来上がっていた。

生まれて初めて、「出来立ての砂糖」を口にした。

普通の砂糖に比べてミルキーでコクがありながら、甘ったるさは感じられない。そしてこのパームシュガー、美味しいだけではなく、血糖値の上昇率が白砂糖と比べて3分の1なのだという。おまけにアンチエイジングにもいいらしい。これも幻の砂糖と呼ばれる理由の一つなのだろう。

おかしづくりはパティシエだけで行うものではない。材料や器具をつくってくださる方がいるからこそできること。生産者やその過程を知ることで、より想いのこもったものができて、それはかならず、味に、あらわれる。

旅はいつもわたしに大切なことを教えてくれる。

上の写真はわたしが帰国時に、カンボジアのパームシュガー、スリランカでしかとれないキングココナッツオイル、フィリピンのBee farmで買った蜂蜜を使って焼いたフィナンシェ。しーっとり、ココナッツの香る贅沢なフィナンシェに仕上がりました。

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ライツ社の周りにいる、普段は作家でもなんでもない(でもとてもおもしろいことをしている)みなさんの記事を連載。 2018年12月現在の連載タイトル ・「世界のお菓子(食)を巡る旅」菅野つばさ ・「平屋私庭日記」大阪の若手庭師 中山智憲
3つ のマガジンに含まれています
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