「この話、ホンマなんですか?」 新聞小説作者インタビュー
明るい出版業界紙で連載している新聞小説「書店主と賑やかな常連たち」。この話を書かれたのは、兵庫県姫路市で実際に書店主をされていた清水さん。
前回は「ナカタ君が投げた自転車が車のフロントガラスに突き刺さって、持ち主のおばちゃんにこっぴどく叱られる」というホンマなん?的な展開でしたが、話はすべて実話とのこと。
というわけで、作者の清水さんにいろいろ話を聞いてみました。
結局人が一番エンターテイメント
ーあれ、ホンマなんですか?
清水:そうですそうです。全部ほんとの話で。
ーなんで文章を書こうと思ったんですか?
清水:お店でこんな人いたよ、と話してるうちに、「おもしろい」とか「ほんとにそんな人おるの?」とかいろんな反応があったので、まとめてみたのがはじまりです。時間もあったので。
ー本屋に人が集ってるのがいいなと思って読ませてもらいました。
清水:そうですね、結局人が一番エンターテイメントというか。人に会うぐらいしかないじゃないですか、大抵のことは家で出来てしまうし。そう思うと人と人が会うっていうことが楽しいと思っています。
ーそうですよね。
清水:人だからめんどくさいこともあると思いますが(笑)
ー話を読んでいると、一番実感しているのが清水さんな気がします。おじいさんに自転車で連れ回されたり、けっこうめちゃくちゃな話もありましたよね。
清水:めちゃくちゃなおじさんね(笑)
人が集える場所を作りたくて
ーいまはお店はもうないんですよね?
清水:いまは同じ場所でふたつに分かれて本屋さんがあります。一つは今後話に出てくると思いますが、前のお店で働いてた子がやってるんですよ。
ーそうなんですね。お店は何年ぐらい?
清水:2012年まで8年ぐらいやっていました。
ーなぜ本屋さんを始めたんですか?
清水:海外に半年ぐらい行っていたことがあって、帰ってきたときに大人の遊び場じゃないですが、人が集える場所があるといいなと思って。
ー海外は長かったんですか?
清水:アジアとニュージーランドに半年ぐらい行っていました。旅っていろんな出会いがあって、それがよかったんですね。それで、日本に帰ってきて、本を通していろんな人が集まってきて、その橋渡しをできたらと思って。
まぁそれも後付けですが、とにかく楽しいことがしたいと思ったんです。
ー「楽しいこと」の選択肢に本屋があるのがいいですね。お店に本があることでいきなり入りやすくなりますよね。
清水:そうですね。本を窓口にして、カフェとお酒とっていうコンセプトでしたね。ちっちゃいところでしたけど。1階部分がブックカフェで2階がギャラリー、隣の建物の2階もあったので、そこは無人で本だけが並んでいる部屋にしていました。
ー楽しそう。近所にあったら嬉しいお店です。
清水:ちなみに、隣の建物の本を買いたい人は、いったん外に本を持って出て、1階に来てもらって会計するような。
ーけっこうゆるいですね(笑)
お客さん同士が出会って、友達になって
ーこういう構えない雰囲気だからいろんな人が来てくれたんですかね。
清水:どうでしょう。もともと本好きはおもしろい人が多いですよね(笑)
ー登場人物のみなさん、かなり個性的でした。ほんとにみんな実在する人なんですよね?
清水:そうですね。じゃないと書けないですよ。名前は仮名ですけどね。
ー今後出てくるストーリーですが、常連さんの家に招かれてご飯を食べに行ったり、お客さんとの関係が深いですよね。
清水:そうですね。けっこうお客さんとご飯を食べに行ってましたね。本の話をすると、距離感が近くなるんですよね。逆にそれがめんどくさいこともありますけど(笑)
ーそうか(笑)
清水:好きな本の話になると、割とその人の内面が分かってくるというか。
ーたしかに。同じ本が好きだった時は意気投合しちゃいますよね。
清水:共感し合えるというかね。これまでお店のお客さん同士が出会って、友達になって、お店で待ち合わせしてくれたりすることもあって、嬉しかったですね。
ー本屋で友達ができるっていいですね。素敵なお店だったんですね。
清水:それはなんとも言えないですが(笑)
ーお店のお客さんって清水さんにとってどんな存在だったんですか?
清水:そうですね、完全プライベートの友達ではないから、どこかで線引きはしていたんですよね。あんまりやりすぎると商売にならなくなっちゃう部分もあって、難しいですね。あくまでお店とお客さんなので。
ー難しいですね。
清水:逆にもどかしさは感じていました。お客さん同士が仲良くしているのが羨ましいなと思ったり。
ーそういう心境なんですね。
もし好きに書店やるなら
ーお店を閉めて寂しかったりしないですか?
清水:「またやらないの?」とか言われるんですけどね。全然またやろうとは思わないです(笑)イメージぐらいはありますけど。
ー逆に解放されたみたいな感じですか?
清水:閉めた直後はもう解放感がすごかったですね(笑)もともとウロウロするのが好きなたちなので。
ーもし好きに書店やるならどんなお店がしたいですか?
清水:もしやるなら田舎に行きたいですね。山の中とかのロケーションのいいところで一日中居れるような場所がいいですね。遊びに行くような感覚で来てもらえるところがいいです。ニュージーランドに行ったとき、けっこう田舎の山の中にいい感じのカフェがポツンとあったりして、それが流行ってたりするんですよね。
ーそうなんだ。
清水:日本でも田舎でお店する人が増えてきましたけどね。知り合いが田舎でカフェやってますけど、ヤギ飼ったりしてますね。いいですよね。ああいうの。
ーまたお店を始めたらぜひ教えてください。絶対あそびに行きます!
◇
というわけで今回は作者の清水さんのインタビューでした。旅で人との出会いのおもしろさに気づいた清水さんが、人が集える場所として始めたのが本屋さんでした。結果的にかなり個性的なエピソードが目白押しになるのですが、それは小説で読んでみてくださいね。
新聞小説「書店主と賑やかな常連たち」は明るい出版業界紙で週一で連載中です。
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