「推し本」が200冊売れる書店の秘密【ブックランドフレンズ@大阪伊丹】
見出し画像

「推し本」が200冊売れる書店の秘密【ブックランドフレンズ@大阪伊丹】

兵庫のJR伊丹駅の近くに「ブックランドフレンズ」という書店があります。24坪ほどの小さな本屋さんですが、その時の「推し本」だけで200冊も売り上げるそう。

画像5

ちなみに、伊丹といえば近くに大型ショッピングモールがあり、関西指折りの売上を誇る大型書店もあります。

それなのに、です。

「推し本」といえば先日記事にした書店員さんの文学賞も「推し本」と言えそう。

でも、文学賞みたいに発表しているわけでもないし、推すだけで何百冊も売れるのは普通じゃない。

そんな疑問を抱え、お店に取材へ。到着するとお客さんと談笑する店主の河田さんの姿が。ごあいさつすると店内のテーブルに案内され、河田さんが美味しいコーヒーを淹れてくれました。

画像2

プロフィール
河田秀人(かわたひでと)
1971年、奈良県生まれ。元々同じ場所にあった書店での店長を経て、2003年ブックランドフレンズ店主に。趣味はコーヒー豆の焙煎、カップ集め。
ブックランドフレンズのHPはこちら。https://www.honyakamo.com

ショッピングモールの逆振りで大成功

ーまずは、お店の歴史から教えていただきたいのですが、お店を始められて何年目になりますか?

河田:今18年目ですね。

ーこの場所で始められて。

河田:そうですね。元々この場所には違う本屋さんがあって、僕はそこで店長をやってたんですよ。オーナーがある時辞めるということになって、そのあと僕が継いだという感じですかね。

ーなぜ辞められたんですか?

河田:近くにショッピングセンターができて。人がものの見事に減ったので、もう仕方がないなって。僕だってそんな場所で成功する根拠なんてありませんでしたけど、店長時代にできなかったことをやってみて、ダメならすぐ諦めようと思っていました。

ーどういったことを試したんですか?

河田:商品構成をガラッと変えました。ショッピングセンターを何度も見学に行ったんですけど、やっぱり女性か子どものものが圧倒的で、男性が楽しめるお店ってほとんどない。なので徹底的に男性の趣味の本に力を入れたんです。

ー具体的には何の本になるんですか?

河田:男性って趣味に関してはお金をいとわず使う方が多いというか。そういう中で思わぬヒットがありまして、それがミリタリー関係の本なんです。

ーミリタリー。

河田:例えば戦艦大和の図面集って1冊5500円したり。ビニールがついてて、中を見れなかったんですけど、1冊自分で仕入れてみて。置いたらその日のうちに売れていくっていう。

ーすごいですね。

河田:1日経たないうちに1冊売れたので、次は5冊仕入れて。すると1週間経たない内になくなる。「あれ、けっこういけるぞ」と。そうして動きを見ながら増やしていったらお客さんがついたというか、喜んでくれて。

ーすごいな。5500円の本が。

河田:飛ぶように売れました。商品構成を変えるといってもいきなりガラッと変えてしまうのはよろしくなかったんで、少しずつ。

大きな書店では見過ごすような商品でも、一点一点の数字を見て、ジャンルごとに一番みんなが求めているものは何かなとか、実験しながら変えていきました。

画像9

危機再び、書店は外的要因に振り回される

河田: 2003年の3月31日にブックランドフレンズが開店して、ずっと右肩上がりで、ほれみろという感じだったんですが。2005年の4月に危機が訪れるわけです。

もうこれは皆さん全国的にご存知のことなんですけど、4月25日にJR福知山線脱線事故が起こって、駅のすぐそばなので電車が止まってしまったらもう人が来ないという状況。

ーこれはもう明らかに危機ですね。

河田: このとき商品構成もかなり男性寄りで、ファンがついて、それで来てもらってると思ってたんですけど、大間違いで。結局サラリーマンの方が仕事帰りに通勤路だから来てくれていた。だから電車が来ないと人が来なかったんですね。

前のオーナーが辞めたのも、ショッピングセンターができて人が来なくなったから。いつも外的要因に振り回されるんだなぁって。例えば近くにコンビニ一つできただけで週刊誌が売れなくなる。これってやっぱり避けられないですよね。

じゃあ外的要因にこんなに弱い本屋って、どうやって続けていくんだろう。要はそういうことが起こってもお客さんが来てくれる理由ですよね。でも、これが全然わからなかったんですね。

電車は2ヶ月ぐらいで復旧されたんですけど、結局電車が動き出してもみんな戻って来なかった。

折れた心の支えは本

河田:やっぱり売上的にかなり落ち込んだので、このままではやっていけないというところまでいったんですよ。どうせ店をたたむなら何をしておいたら後悔がないのかなと思って。

考えたら、自分が読んでおもしろかった本や感動した本、これは伝えるべきだなぁと思いました。その間、けっこう精神的に落ち込んで、だけど本に支えられたってことがあって。

ーよければ聞かせてください。

河田:棚を模様替えしたり商品構成を変えたり必死にやるんですけど、そもそも人が来ないなら、どんなにやっても結果が出ない。いつもレジを閉める時の数字を見ては落ち込んでました。

だけど明日また店を開けないといけない。あの手この手っていうのを思いつく間はいいけど、だんだん策がなくなってくる。

そうすると自分のモチベーションを上げることがまず大事になってきて。もう心の支えが必要なので、ちょっと感動するいい話とか、自然と手がそっちに伸びて。

ーどんな本を読まれたんですか?

河田:一番記憶に残っているのは『感動は心の扉をひらく』(著 椋鳩十)という本です。

椋 鳩十(むく はとじゅう):日本で初めて本格的な動物文学のジャンルを切り拓いた作家。小学校5年生の国語教科書に掲載されている『大造じいさんとガン』が有名。

ーどういうところが響いたんでしょう?

河田:そこには人の才能について書かれていたんですけど。動物はみんな同じ才能を与えられている。チーターなら足が早いとかね。

でも人間は一人ひとり違う才能を与えられている。でもその才能が何なのか、いつ見つかるかはわからない。

でも何かに大きく感動した時、心の中で地震がおきて、その拍子で見つかるかもしれないと、そんな話が書いてあったんです。

僕は当時、「自分には本を進めることもできないし、才能なんてない人間なんだ」と思っていました。

でも、「まだ見つかっていないだけ」。その言葉で号泣しました。

ーこういう状況だけに、深くささりますね。

河田:ある時、よくよく考えたらここ毎日、本に支えてもらってるなと気づいて。それでこの不思議な本の力、折れた心もすぐに復活させてくれる力、これを伝えるしかないなと思って、自分が読んだそのままの感想をPOPに書いて伝えるようになりました。

そしたらたまたま来た人がその本の前に立ち止まってくれて。嬉しくってね、ちょっと隣に行って「この本こうこうで……」って話をしたら、「そうなん。おもしろそうやね。じゃあ読んでみるわ」って。

あれ? 本売れたと思って。意外にシンプルで、自分が読んでおもしろかった本を自信持ってすすめるという。

画像5

こちらの興味のあることを伝えると「これおもしろかったですよ」と本を紹介してくれる河田さん。河田さんもその本が好きなことが伝わってくる。

ー計算もなくやったことが売り上げにつながった。

河田:そうですね。それまで僕は統計や理屈でずっとやってきたので。すごく単純なことなんですけど、新鮮で。

それだけでも嬉しかったんですけど、後日けっこうな確率で読んだ人が再びやってきて、「兄ちゃんこの前にすすめてくれた本すごいよかった」って。感想を言ってもらうなんて、本屋始めて以来初めてで。

ー嬉しいですね。

河田:嬉しいです。本屋の喜びってここやなって気づいて。店的には危機ですけど、ここに来て本屋の一番いい所に気づくんやって思って。

すごい嬉しかったから「そうでしょ」とか言って話が盛り上がったし、今度は「次また何かオススメ教えて」って言ってくれるわけですね。人によっては同じ本を、「この前のあれ、同じの5冊ちょうだい」とか言って、「この前読んだじゃないですか」「いや友達にあげようと思ってて」みたいな。

ーかなりハマったんですね。

河田:そうですよね。そういう現象が出てきて。

ー立ち話もやっぱり熱が入りますよね。

なんで書店員の僕にこんなに話してくれるんだろう

河田:今度は突然、初めての方が来てこう言うんです、「上司からここ行ってこいって言われて来たんですけど」とか、「友達が紹介してくれて、ここに来たらおもしろい本を紹介してくれるって聞いたんですけど」とか。

だけど、どんな人かもわからないのに本すすめるのも。だから質問するようにして、「何か今やりたいことでもあるんですか?」とか、あるいは「普段どんな本読んでるんですか?」とか、それに合った本を選んであげる方がいいかなと思って。

ーそこで「これ売れてますよ」じゃなかったんですね。

河田:それはまず世間で売れている本が小さな書店じゃ手に入らないんで。僕が読んだ本しかすすめられないんですよね。

話を聞きだしたら皆さんいろいろお話しして下さって、それに対しての選書になっていきました。「私仕事を辞めたいなぁと考えてて」みたいな話が出ると「そうなんですか、何か理由があるんですか」とかカウンセリングみたいな。

ー案外そういう話を気兼ねなくできる人って、貴重ですね。

河田:僕も不思議で、ご家庭のドロドロとしたこととか、複雑な人間関係の悩みとか、カウンセラーでもない僕になんでって。でも皆さん言いやすかったんでしょうね、ここでは。僕はそれを聞いて、「だったらこういう本があります」と本を選ぶ。

ーそこが本屋ならではですね。

河田:そうですよね。その時も不思議だと思ったんですが、皆さん遠くからいらっしゃるし。友達のたった一言「じゃあ伊丹の本屋さん行ったらいいよ」だけ頼りで来られて。

だけど、はじめに紹介されたところが本屋でよかったなと思います。変な話、宗教とかすごく高額な壺だったりってなると、余計複雑になりますから。健全でいいなと。本を読んでそこからヒントをもらうっていう。

それがある時、どんどん増えていったんですよ。

ーだから店内に向かい合わせで座れるテーブルがあったり、コーヒーを淹れてくれたりするんですね。

画像9

河田:僕もまったく人が来ない時を経験したので、自分の役割があるっていうのは嬉しかったですね。でも、あまりにも時間を使うようになったので、これは戻さないとバランス悪いなぁと思って、最近は調整するようにはなっています。

ー本業が何屋かわからなくなりそうですね。

河田:ちょっと話がそれますが、事件性がある話もあったりすると、お店で他のお客さん聞いているのに話しづらいなと思って、「ちょっと喫茶店行きましょうか」って喫茶店に場所を移して。とてもじゃないけどその人が本買える状況ではないから、本も売らずにコーヒーご馳走して。その夜に電話が鳴って「あれから話をしたら主人が家で暴れてるんです」って、いやもうこれすぐ警察呼んで下さい!みたいなこともあったぐらい。

読書の階段を作ってあげる、心の本棚

河田:あとはその一方で純粋に今まで本読めなかったっていうような人がここで「私にもこの本読めた」とか「ちょっと自信がついた」とか「本が好きになった」とかでどんどん読むようになったり。

ー僕がお店入った時にいらした女性の方も常連さんですか?

河田:そうですね。あの方も通われてもう2年くらい、神戸からです。最初、本はそんなに読まないけど、たまたま人に紹介されて来られて。だからはじめは、「私、そんなに読書経験がないし得意ではないんだけど、せっかく来たんで私でも読めるような本を紹介して」ってことでした。

読みやすくて年齢的にも内容がふさわしいものをおすすめして。すると気に入ってくれて、ちょっとずつ読書の自信がついて。おもしろかったとか読めたとか、次はこれに挑戦してみようかなとか。

ー最初はどんな本をすすめたんですか?

河田:最初は読書が苦手だったので児童文学の読みやすいやつとか。大人が読んでもおもしろいやつ。

ーまずは読みやすくておもしろい本。

河田:そうそう。やっぱりここで外すと後はないと思ってるので。途中で挫折するとか、意味がわからないとなると「やっぱり読書って難しい」って印象になるので、1冊目はやっぱり大事ですね。だから僕の中の定番のやつの中から選んで、まずやっぱりおもしろいという体験を作ってもらう。

ー河田さんの心の本棚があるんですね。これがいけたら次これみたいな。

河田:ありますあります。その階段を作ってあげるのは一つ役割かなと思うので。

勝手に立体になったお客さん同士のつながり

河田:そのうち居合わせた人が「私それ読みましたよ」とか「これ良かったですよ」とか、普通に成り立つ状態になったかな。

ーそれがすごく不思議というか、どうやってそういう空間になったんですか?

河田:それは例えば、お客さんと僕が話してて「あの本すごい泣いたわ」っていう話だったら、横で聞いている人から「私も読みました」とか。本好きな人はおもしろい本を知りたいので、「それおもしろいですか。じゃあ読んでみるわ」とか、そういう会話が起こります。

ー僕みたいに「話に加わりたい」と思ってもできない人もいそうですが、なにか工夫はありますか?

「スタッフのおすすめを知りたいひとは気軽に聞いてください」
「お探しの本があれば一緒にお探しします。どうぞお気軽に声をかけてください」
こんな風に店内にPOPを貼ったり、本の紹介POPを読まれてるひとには「この本おもしろかったですよ」とひと声かけたり。

来客が重なると5人6人で話しこんでしまうときがあるんですが、そんな時に来られた方はきっと輪に入りにくいので、僕が抜けてその人の接客に入ります。

ーそうやって細かい気配りもされてるんですね。

河田:話が盛り上がると「どちらから来たんですか」とか、もう連絡先を交換し合ったり。もちろんその場限りのこともあるんですけど。

ー完全に河田さんから離れて。

河田:これが非常に良いです。

ー本で意気投合するとすごいですね。

河田:そうですね。特に同じ本を読んでいると親しみがあるんですよ。共通の価値観っていうのを持っていて、すぐに仲良くなれますね。

ー確かに言いたいですよね。この本のここ良かったとか。

河田:そうなるとこっちとしては楽ですよね。一人ひとりが皆で紹介しあっている状態なので。

ーお客さんと河田さんとの線だけだったのが。

河田:そうです。立体になりました。

他にも、他人同士でもその場で「これプレゼントするわ」って粋なことをする人がいたり。例えば高校生とか大学生でも遠くから来る子とかいるんですよね。学生ですからお小遣いって限りがあるし、交通費もかかるし。

ー遠くってどのあたりから来られるんですか?

河田:大阪、兵庫が多いですが、ときには三重、奈良、京都、関西圏から、たまに長崎、山口、東京、沖縄、北海道からも。

ーすごい、そんなところからも。

河田:「今日、どこどこから来たんです」とか言うと、聞いている誰かがびっくりして「なんで」とかって。やっぱ縁ですよねそういうのって。

ー聞いてしまったからには力になりたいっていう思いが。

河田:そうでしょ。応援したくなるでしょ。そういうのが生まれているので。すごくいいなと思うんですよね、本を通じてそういうことが出来たら。やっぱり人の関わりって大事だと思うんですね。

ーこのお店の中で立ち話する以外に、お客さん達だけで集まっていることがあるんですか?

河田:ありますよ。今はリアルで集まりにくいんで、zoomですが。ある本をテーマに、すごくその本を気に入った子が「この本で読書会やります」って言って、その本を読んだ子達が集まったりしてますね。

ーそれってどうやって繋がっているんですか?

河田:だって今はSNSがありますから、ほとんどその場で友達申請するので、直接メッセージを送りあったり、イベント立ち上げたりするとそれを見て参加する方とか。

ーたしかに。ちゃんとSNSを活用されてますね。

河田:だから本を買いに来る方で「この本はありますか」って。「そこにあるよ。どうして急にその本が?」って言ったら、「誰々ちゃんが日記で書いてたから読みたくなって」とか、こういうのは割と日常的に。

僕がすすめた本じゃなく読者がすすめた本、たぶんそっちの方が説得力あると思うんですよね。

同じ本が200冊売れるってどういうこと?

ーその話から延長線上なのかもしれないですが、同じ本が200冊売れるっていう、あれはどういうことなんですか? いきなりそんな風にはならないですよね。

画像8

お店にダンボールのまま積み上げられたサイン本。ブックランドフレンズでは珍しくない光景。

河田:積み重ねですよね。さっき言ったのはその人の悩みごとに合わせた選書だったり、階段を作ってあげるという話でしたけど。ある程度私を信用してる人は、来ていきなり、「今何かオススメある?」って言うんですね。「今の一番のオススメ何?」とか。そしたら「これ」って。「これ良かった」って言います。説明はいらない。

ーすごい、そんな域に入ってるんですね。

河田:「そう。じゃあこれ買うわ」って。「他にまだある?」とか。自信があるやつは来る人来る人に、聞かれたら「いや今これが一番」って言って。その冊数がだんだん増えてきたっていう。

ーこの18年でこの規模になってきたと。すごいですね。一つひとつの積み重ねの結果なんですね。

河田:そうですね。今年は遠方の方は来れないので、メールで、例えば「5000円分ちょっと私の本選んで送ってくれる?」とか、普通の注文でも「あと3冊オススメ入れといてくれる?」とか任せて貰っているので非常にありがたいです。

そしたら自分の持っているカードが切れるので。もちろんその人のことを考えて、前この本が気に入ってたから、たぶんこれもいけるだろうとか。

ーすごいですね。しかもお一人お一人のことをちゃんと覚えていらっしゃって。

河田:会話してる人はね。

ーちなみに何人くらいそういった形でいらっしゃいます?

河田:かなりいますよ。200人ぐらいいるんじゃないですか。もうちょっといるけど、読書って波があるんですよね。読書モードになる時期。

ーわかります。

河田:読書から離れていく人もいたりとか、また戻ってくる人もいたりとか。

ーじゃそこをならすと200人くらい。

河田:そうですね。今言った200人ぐらいがひとまとまりにあるわけじゃなくて、別に誰とも繋がらない方もいるし、グループが分かれていたりもします。好きな本が違ったりするので。中には中心になって「この本で読書会やろう」とか、人にプレゼントしたりする、そこでまた広まっていく。

だから僕以外に本をすすめている人がいっぱいいるっていうことですよね。だから同じ本が100冊200冊売れるっていうのは僕一人でそんなにすすめているわけじゃなくて、そういう所があるからです。

ー拡散されてるんですね。

河田:そうですね。あとは、うちの店では本をプレゼントするのが多いというか、日常なんですよ。学校の先生なんかも卒業生全員に、自分のお小遣いで、本当に今その本を届けたいというので。そしたら1クラス35冊とか、会社の経営者さんだったら社員に100冊配るとか、そういうのも含めてなんで。

ーそういう文化なんですか? ここの。

河田:ここっていうか、世間一般的にどうなのかわかんないけど。

ーたまにそういうご注文を頂くことはありますけど、そんな頻繁にあるかなって。

河田:頻繁にあります。

ーたぶん、コミュニティの誰かがプレゼントし始めたら、それが広まったってことですよね。

河田:贈られた人もきっかけはそうやって人から貰ったものだけど、自分も読んで良かったら「こんな本ならあの人にも読ませたい」って、そういう連鎖が起きてますよね。それっておもしろいし、読書って個人のものではないって思うんですね。やっぱり人との縁を作ってますよね、読書って。

画像7

ブックランドフレンズの棚の上には巨大化された喜多川泰さんの小説が並ぶ。これはファンの方々が「もっといろんな人に作品の良さを知ってほしい」と講演会を開き、その際に自作しているもの。講演会のスタッフも全てファンの皆さんで行なっているとか。

本屋ほど人の人生に関われる素敵な仕事はない

河田:僕も本を読みだしてからいろんな人とつながりました。読者同士もそうだし、著者の方とか、あるいは著者の方が他の誰かをすすめている場合とか。

僕は人生どこに身を置くか考えたときに、本で繋がった人と一緒にいろいろ共有したり生きていくのが一番楽しいし、人がそうやって本を読んだ後の姿を見れるのが一番感動的なんです。

みんなが本を読んだ後の感想を言ってくれるのは、その人の人生を見させて貰ってることなんで。

たった1冊の本との出会いで仕事が見つかったり、あるいは海外に飛んでいったり、あるいは結婚に結びついたり、それはいろいろありますけど。

ー人生を変えてますね。

河田:そう。そこを見ると病みつきになります。本屋の職業ってここまで人の人生に関われて役割もちゃんとあってやりがいがあって、こんな素敵な仕事ないなって思います。

ー店内の看板やチラシに書かれている「本以上のものを」っていうのは。

河田:そうですね。そこから来てますね。そこをみんなで楽しもうというか。

画像5

小説『甘夏とオリオン』(著 増山実)の舞台となったまちを著者と一緒にあるくツアーを開催。その後、参加者の1人がお散歩MAPブックカバーを作成してくれ、お店でも配布したそう。

自分がおもしろいと思う本をすすめる

河田:ふと気がついたんですけど、読書って確かに読まない人もいるし関心がない人もいるけど、でも否定する人ってあんまりいないんですよね。

子どもに「読書ダメ」っていう親は聞いたことないし、本を読む読まないに関わらず、どこかで「読書っていいんだ」っていう認識はあるんですよ。これってすごく追い風じゃないですか?

ーそうですね。

河田:こんな業種。

ー潜在的に良いものだっていう認識があって。それをすすめたらいいっていう。

河田:そうですよ。

ーこのお店みたいに読者の輪が広がったり、読書が続かない人に歩み寄る、みたいなことができたら。

河田:だから本屋さんでこの本おもしろいって、もっと発信したらいいなって。直木賞とか本屋大賞とかじゃなくて、その担当者の「これは」っていうのを1冊紹介するだけで、かなり変わります。

かなり変わるし、そこに必ずファンがつくし、100人いたら100人に受け入れられるわけじゃないけど、何らかの反応がありますよね。

伝わらなかったらその理由を辿ってみたらいいし「この本こんなに自信があるのになんでお客さんは聞いてくれないのか」って。

それはやっぱり先にお客さんのことを聞いてあげないといけないとか、その関係が出来る前に押しつけるのはちょっと、とかね。

ー関係性をどう築いていくかというのは大きなテーマですね。その一つの好例を見せてもらいました。ありがとうございます。

お話を聞いて、素敵だなと思うことがたくさんありました。本を読まなかった人が小説大好きになったこと、お客さん同士が勝手につながりはじめたこと、そのお客さん同士で自発的に本をプレゼントし合っていること、挙げれはキリがないです。

その発端になっているのが、このブックランドフレンズという本屋さんなんですね。本屋さんは本を売るだけじゃなくて、こうして人と人との活動を生む装置でもある、と感じられる取材でした。

明るい出版業界紙では出版業界の明るいニュースを届けています。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
ライツ社

出版業界を新しくしたい。もっと良くしたい。読者と、書店と、友達のような出版社でありたい。「本ができること」を増やしたい。いただいたサポートは、そのためにできることに活用させていただきます。

私たちの挑戦自体が、明るいニュースになると信じて
2016年創業。海とタコと本のまち「兵庫県明石市」の出版社です。writes.right.light「書く力で、まっすぐに、照らす」を合言葉に、ジャンルにとらわれず本をつくっています。 https://wrl.co.jp