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ひとりずつ、どの本を届けるか選んでいます「ブックサンタ」の舞台裏

この記事は2022年に公開されたものですが、ブックサンタは今年も実施中です!参加方法は変わりませんので、ぜひご参加ください。締め切りは12月24日のクリスマスイブまで。


 昨年ライツ社も参加させてもらった「ブックサンタ」。

書店やオンラインで寄付した本はそのあと、どんな旅をして子どもたちのもとに届いているんでしょう。

運営団体の「チャリティーサンタ」は全国に42の支部があり、本部に届いた本が各支部に振りわけられ、そこからご家庭に届けられています。

今回はチャリティーサンタ神戸支部の方々に、サンタさんが子どもたちに本を届ける舞台裏をお聞きしました。

プロフィール
大森さん
チャリティーサンタ神戸支部代表。大学生のときにチャリティーサンタを知り参加。サンタ歴は今年で10年目。

外川さん
チャリティーサンタ神戸支部運営スタッフ。サンタをはじめて4年目。現在は仕事の都合で石川に移住しながらも、支援を続けている。


 子どもの夢を守るための「サンタ講習会」

 ー大森さんは大学生のときから参加されているそうですが、どういうことがきっかけだったんですか?

大森:知り合いに「こういう活動があるからどう?」というふうに誘われて。当時、秋田に住んでいたので、秋田支部の代表の方のプレゼンを聞いて、すごくいい活動だなと思ったのがきっかけです。

ー説明会があったんですね。

大森:いまもやっているんですが、「サンタ講習会」というサンタの仕組みを説明したり練習をする会があるんです。

ー外川さんはどういうきっかけだったんですか?

外川:当時、お子さんがいる同僚に「ことしサンタを呼ぶんです」と言われたんです。「どういうこと?」と話を聞くと「ボランティアのサンタクロースが会いに来てくれるんです」というのを聞いて、チャリティーサンタを調べてみて、実際にやってみたいと思ったのがきっかけです。昔からヒーローが好きだったので、そういうのをやってみたかったんですよね。

ー呼ぶというのも驚きだけれど、じぶんもなれるんだというのも、驚きですね。

外川:驚きましたね。

ーサンタになるためには「サンタ講習会」に参加するんですか?

大森:そうですね。当日のボランティアさんは必ず講習会に参加していただきます。広くボランティアを募集しているので、その方たちに突然サンタさんになってくださいと言っても無理があって。ばれてしまって子どもの夢をこわしてしまうのはすごく悲しいことなので、夢を守るために必ず練習には参加してくださいとお願いしています。

ー具体的にどんなことをやるんですか?

大森:ロールプレイングをします。

ーそれはサンタ役がいて、子ども役がいてというような。

実際の練習の様子も見せてもらいました

大森:実際にやってもらいます。事前に保護者の方からお子さんの情報を集めているので、お子さんの名前や性格、年齢、あとはその子に頑張ってほしいことと、サンタさんから褒めてほしいこととなどをお聞きしています。なので、ただプレゼントを渡すだけではなくて、それをみなさんに覚えていただいて、子どもたちに伝えてもらいます。

ー決まった流れみたいなものはあるんですか?

大森:なんとなくの型みたいなものはあるんですけれど、絶対にそんなうまくはいかないですね。なので、基本はサンタさん役をやる人に、まずは考えてやってもらいます。「こうしたらいいのかな」と試行錯誤して繰り返し練習して、という感じです。

ーまずは練習を重ねるんですね。外川さんも講習会に参加されたということですね?

外川:ぼくは大阪支部で講習会に参加したんですけれど、サンタとしてのいろんな心構えとか、言葉の使い方とか、そういったものをそこで教えてもらって、いざやってみようという形でした。

ー言葉の使い方って、たとえばどんなことですか?

外川:語尾は全て「〜じゃ」とか「〜じゃのう」といったサンタ言葉です。方言も使わないようにして。

大森:たとえば関西に住んでいたけれども、秋田に引っ越した子がいた場合、去年に会ったサンタさんは関西弁だったのに、今年のサンタさんは秋田弁だとなると、子どもが疑問に感じてしまうので。

ーなるほど。

外川:最初はみんなぎこちないんですけれど、だんだんできるようになってきますし。人それぞれその人が持っている良さを出せるように講習会を重ねていって、ほんとうにその人がサンタになっていくという感じです。

ーじゃあ講習会は何回も受けるんですね。

外川:支部によって異なります。最低1回の講習は必須ですが、ぼくは「サンタをやりたかったら、うまくなってください」と最初に言われたので、かなり受けにいっていました。

ーたとえばぼくがサンタの練習をしているときに、下手くそだったらダメ出しがあるんですか?

大森:神戸支部の場合は、何人かでチームをで組んでもらって、ひとりがやるのを周りで見てもらって、コメントカードをみんなに書いて、やった人に伝えるようにしています。「こういうところが良かったです」「こういうところはもうちょっと直したほうがもっと上手になると思います」といった感じです。

ーけっこう、厳しいですね。

大森:そうですね。神戸支部、大阪支部は特に厳しい。

外川:厳しいみたいですね。ほかの支部を実際に見たわけではないですが、福岡県と愛知県でサンタのボランティアをやっていた方が来て、びっくりしていました。

大森:あとは自己肯定感を高めるというところも大事にしています。「サンタさんはずっと君のことをお空の上から見ているんだよ」とか。頑張れと言うだけではなくて、「君がこれをできるようになったら、それを見たサンタさんはすごくうれしいんだ」みたいな伝え方をすごく大事にしています。 

練習を重ねサンタになったみなさん

ー神戸支部で、その年にサンタになる人は何名くらいいらっしゃるんですか?

外川:20人くらいでしたっけ?

 大森:そうですね。ボランティアさんが50人くらいで、そのうちひげや眉毛をつけてサンタに扮装した方が、去年は20人いるかいないかくらいですね。訪問するサンタさんとサポートするサンタさんがいて、2~3人が一組になって行動するようにしています。町中に出るし、ご家庭の場所も調べないといけないのですが、それをサンタさんがスマホを持ってうろうろしていたら、町にいる子どもたちの夢もこわしてしまうので。あと、サンタさんはすごく緊張して頭が真っ白になるので、サポートする人が必要なんです。

ーサンタの格好で行くんですね?

大森:そうですね。拠点があって、拠点からバスとか電車に乗ってもらいます。

ーすごいですね。町ゆく人も「サンタだ」という感じで。

大森:そうです。写真を撮られたりしますよね。

ーみんなをハッピーにしながら。

外川:けっこう話しかけられたりするんですけれど。そのときでも夢をこわさないように。

ひとりずつ、どの本を届けるか選ぶ

ープレゼントする本のセレクトはあるんですか?

外川:やります。ほんとうに思い出に残っています。

大森:去年、神戸支部では要支援家庭のお子さんが85人だったので、85冊ぐらいを選びました。

外川:大変でしたね。かなり議論をしながら本を選びました。

ーどういう感じなんですか?

大森:幼児や保育園児が何人で、小学校低学年が何人で、高学年が何人でといった、お申し込みのあったお子さんの年齢区分をまず、こちらから本部にお知らせして、その年齢層に合った本が本部からある程度選ばれた形で送られて来ます。

ー80冊ぐらいがまとめてくるんですね。

大森:そうですね。1軒1軒ご家庭の情報が届いているので、それを見ながら、この子はこの本かなというふうに選んでいきます。

ーご家庭の情報というのは、本の希望ですか?

大森:さっき言った、子どもの年齢とか性格とか、頑張っていることとか、褒めてほしいことも事前にお聞きしているので、そういうところから、この子はピアノを頑張っているんだな、音楽の本をあげようかなみたいな、そういう形ですね。

ー前回寄付した本もそうやってだれかが頑張って選んでくれたんですね。

外川:ラッピングもして届けましたのでご安心ください。

いよいよ子どもたちに対面

ーおうちに入るタイミングは保護者の方と示しあわせたりするんですか?

外川:そうですね。

大森:サポートさんが入る直前に「いまから入ってもいいですか?」というのをメッセージして、保護者の方から「お願いします」というのを確認したらピンポンと呼び鈴を鳴らすみたいな感じですね。 

ーおもしろい。家に入ると反応はどんな感じですか?

外川:子どもたちはすごく喜んでくれます。お子さんの反応はもちろんうれしいんですけれど、入った瞬間にお子さんのうしろでおじいちゃんがカメラを構えてこっちを撮っていて、「ドキッ」とするというか。実はやっている方は緊張で頭が真っ白になるんです。

ーそうか、緊張しますよね。

外川:けっこう必死です。

ー練習の成果を出せるか、という場面ですもんね。

実際に手渡ししているところ(大森さん外川さんとは別のサンタさん)

言葉の一つ一つがその子のためになる

ー大森さんは実際にやったときはどうですか? 

大森:行ったときに子どもが喜んで「わあ、サンタさんが来た」って言ってもらえると、すごくかわいいなと思います。やっぱりサンタさんが来たということがすごく子どもの中には残るので、そこがやっていてよかったなと思いますね。

ーいいですね。

大森:あとは保護者の方が言っても聞かないけれど、サンタさんが言ったら聞いてくれるというのがあるので、わたしがサンタさんになって、その子にかける言葉の一つ一つがその子のためになるというか、その子をひとついい方向に導けるというのは、じぶんもやっていてすごくやりがいがあるなと思います。 

ーすごいことですよね。

大森:ブックサンタの本をもらう子は、そもそもいままでクリスマスやサンタさんを経験したことがない子が多いです。そういう子はクリスマスがものすごくつらいし、なにをもらったとか、どういうものをもらったという話についていけない。去年の神戸支部では保護者の方が『保育園の先生からうちの子が今年はものすごく楽しそうに「サンタさんから絵本をもらったんだ」と話していたことを聞けて、わたしもすごくうれしくなりました』という声をいただきました。

外川:去年だと、ボランティアで来た方たちがすごく喜んでくれたのも良かったところです。サンタをやった方が、泣きながら「すてきなクリスマスをありがとうございました」と言ってくださったり、来てくれた大人の方たちが感動というプレゼントをもらっているような。それはこのボランティアならではだと思いますね。 

大森:神戸支部で去年に参加した方の中で、この活動がきっかけで「子ども食堂を立ち上げました」とか、ほかの子どもの支援関係のボランティアを始めましたという方がちらほらいて。それはわたしも初めての経験でした。

本だからつながる

ー本を渡すことでよかったことってありますか? 

外川:本はじぶんの価値観というか、世界を広げてくれるものだと思うので、その本をきっかけにうれしい気持ちだったりとか、楽しい気持ちだったりとか、それを味わってもらえたらいいなと思います。

ーありがとうございます。

大森:普通のおもちゃと違って、長い間愛されるというか。変わらないものというのはやっぱりあると思うので、その子が大人になったときにそのもらった絵本を、今度はじぶんが届ける側で次の子に渡せるということも十分に考えられるので、つながっていけるところがいいなと思いますね。

ーたしかにつながっていけるものですね。流行りとかじゃないですよね。

大森:そうですね。実際に買ってくださる方の基準もそういうところにあって、じぶんが子どものころに好きだった本とか、思い出に残っている本を選ばれていて、そういう本が集まっています。これはほかのプレゼントにはないところなのかなあというのは思いますね。

ーありがとうございました。 


「チャリティーサンタ」代表の清輔 夏輝(きよすけ なつき)さんからもコメントをいただきました。

ブックサンタをはじめるもともとのキッカケは「クリスマス=辛い日」になっている子どもたちの存在に気づいたからです。

クリスマス翌日の保育園や学校では、子ども同士で無邪気に「サンタさんに◯◯を貰った!」「私は★★だったよ!」と盛り上がるシーンがあります。
その同じ空間に「下を向き、なにも言えない子どもたち」がいる。

そんな子どもがいるのと同時に「子どもにクリスマスプレゼントを諦めさせた親」もいるのです。
「今年はクリスマス翌日が冬休みに入っていたらホッとした。去年はほんとうに申し訳ない気持ちで押し潰されそうだったから…」
こんな声を何度も聞きました。

1冊の本が、子どもはもちろん親をも救う可能性があります。

そして、本を通じて「親子の時間」を届けることも。

「寝る前のたった5分だけど、久しぶりに読み聞かせをすることで親子の時間を取り戻せました」
そんなアンケートを見たときに、「本」がもたらしてくれる可能性を再確認しました。

チャリティーサンタでは「子どもたちに愛された記憶を残すこと」をミッションに掲げていますが、ブックサンタの取組はそこに確実につながっていると確信しています。

正直、年々どんどん大変になってきていますが、私たちも成長してこれからも粘り強く続けていきます。
あなたも一緒にブックサンタの仲間になりませんか?

合言葉は、あなたも誰かのサンタクロース。

追伸。
「ブックサンタのこれまでとこれから」について、noteにまとめているのでこちらもぜひ御覧ください。
https://note.com/charitysanta/n/nfbea9a17834c


例年ブックサンタでは小学生向けの読み物が不足する傾向にあります。ライツ社の『放課後ミステリクラブ』も小学校中学年〜高学年向けなのでおすすめですよ!

ブックサンタが気になった方はパートナー書店、オンライン書店、クラウドファンディング、どこからでも参加できます。子どもたちに本とクリスマスの思い出をプレゼントしましょう!


サンタになってみたい!という方はサンタになる特設ページから応募ができます。
※クリスマス間近になると応募をすでに締め切っている支部もあります。ご了承ください。


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