たった4人で営む小さな出版社が、紀伊國屋新宿本店で「月間ランキング1位」をとれた理由
先日、嬉しいニュースがライツ社に届きました。
紀伊國屋書店新宿本店さんで、「世界の旅と食」フェアを実施させていただいたのですが、展開した新刊『この世界で死ぬまでにしたいこと2000』が地図・ガイド部門で「月間1位」を獲得、また既刊『全196ヵ国おうちで作れる世界のレシピ』はくらし部門で「月間2位」を獲得、併売した世界のレトルト食品も「仕入れ全数完売」というお知らせでした。
※注『この世界で死ぬまでにしたいこと2000』以下、ガイド本と省略
※注『全196ヵ国おうちで作れる世界のレシピ』以下、レシピ本と省略
1階広場で新刊ガイド本を10面展開
左の2つのワゴンには既刊レシピ本
レシピ本の著者・本山尚義さんが手がけるレトルト食品も併売
地下1階ではガイド本の著者・TABIPPOが手がける雑貨も併売
旅行書コーナーはそのほか合計4箇所展開
わたしたちライツ社や紀伊國屋さんにとって、とても嬉しいことなのですが、この結果を次につなげるため、ほかの書店の皆さまや出版社の皆さまの参考になれば、という思いで、どのような施策を実施したか、をまとめます。
▶︎結果の数字(展開期間1ヶ月)
・『この世界で死ぬまでにしたいこと2000』(2,400円+税)
171冊売れ →地図・ガイド部門で「月間1位」獲得
・『全196ヵ国おうちで作れる世界のレシピ』(1,600円+税)
195冊売れ →くらし部門で「月間2位」獲得
・併売アイテム「世界のレトルト食品」(650円〜750円)
245個売れ →仕入数完売
・併売アイテム「BUCKET LIST」/「世界の絶景ポストカード」
それぞれ61冊売れ/21枚売れ
ガイド本は通常の単行本の価格で計算すると340冊売れ、レシピ本は発売から約1年経つにもかかわらず新刊並みの売れ行き、レトルト食品も見事完売。合計すると、商品点数で約700個売れ、売上金額で約100万円という結果となりました。もしこれがレシピ本だけの展開だったら売上は約31万円。3倍以上の売上に貢献することができました。
▶︎どのような施策をしたのか?
○9月初旬
既刊のレシピ本が「料理レシピ本大賞2018」の部門賞を受賞
→レシピ本と著者が手がけるレトルト食品を大きく併売展開したいと店長さんに提案
→すると、引き継がれた担当者さんから次のようなご依頼
(ご依頼内容)
・新宿本店で「いちばん売れる場所」1階広場のワゴンでやりたい
・同時にレシピ本を在庫があるだけください、とのご注文
・著者が手がけるレトルト食品も買い切りでやりたい、とご注文(通常、書籍は返本が可能なので、書店にとってはリスクが大きい)
○大量の発注をしてくださるからには売り切る施策をご提案しなければ、と打ち合わせにいく。
ただ、この時点では問題点もいくつかありました。
(問題点)
(1)1階の広場という広大な展開場所に見合う展開になるのか(本の点数や売上金額が足りないのでは?)→ もっと売上を伸ばせる方法ないか?
(2)料理レシピ本大賞フェアはどこの書店でもやっているので、差別化ができない → 何か別にお客様の目に止まる方法はないか?
(3)前回、新宿本店で実施したヨシダナギBEST作品集の特大展開(リンク先参照)と違って、著者の告知力はない → 効果的に書店にお客様を集客する方法はないか?
○そこで、「ライツ社から11月に出るまったく別の新刊ガイド本と一緒に、"世界の旅と食フェア"として実施すること」を提案しました。
(メリット)
(1)新刊ガイド本は定価が2,400円と高価格(単行本2冊分の売上)→ 併売することで、単純に売上が倍以上、3倍になる
(2)ガイド本、レシピ本、食品が並ぶことで、他の書店ではやっていない、見たこともない売り場が生まれる → お客様の目に止まる
(3)ガイド本の著者・TABIPPOには大きな告知力がある(SNSで累計21万フォロワー)→ 併売することでフェアやイベントの告知をしてもらえる
担当者さんからご承諾いただき、そこからはライツ社で動きます。何より大切にしたことは、「新宿本店にしかない、見たこともない売り場」をつくることでした。「レシピ本とレトルト食品」という組み合わせ自体、珍しい売り場ですが、そこに何を足していくのか。
(ライツ社で動いたこと)
・レシピ本の著者の本山さんにレトルト食品の売れ筋20種を発注(この売上によるライツ社取り分はなし)
・店頭の大型テレビで流すレシピ動画を発注
・ガイド本の著者のTABIPPOにSNSでフェア開催の告知を依頼
・さらにフェアの商品点数を増やすためTABIPPOが手がける雑貨を他社の出版社から発注(この売上によるライツ社取り分はなし)
・大型拡材を作成
・両著者が一緒に登壇する書店イベントを実施
・店頭の大型テレビで流すレシピ動画を動画アプリの会社に発注
・手売り(※記事最下部へ)
以上のような施策を実施した結果、レシピ本・レトルト食品・ガイド本・ポストカード・ノートがごちゃ混ぜになった「世界の旅と食フェア」となり、大型の拡材や動画などで、お客様の目にも止まる展開をつくることができました。
担当の方からは、このようなお言葉をいただきました。
「レシピ本」と「ガイド本」と「レトルト食品」という組み合わせはインパクトがあり、お客様にも好評いただけたと感じております。
▶︎所感
ありがたいことに、今回のように書店員さんから大きな展開場所をいただくことがあります。その度わたしたちは、どれだけ真摯に応えられるかを考えています。
・展開場所をもらっただけで満足していないか
・自社の売上だけが上がればいいと思っていないか
・そもそも、その書店、展開場所にとっての最大売上を目指せているか
書店さんから、大切な一等地をいただいたとき、どんなご提案を返せるのか。そこに出版社の「本気度」と「営業という職種の存在理由」が垣間見れるのではないでしょうか。
最初にこの展開を決めてくださったのは新宿本店の店長さんでした。料理レシピ本大賞の授賞式でご挨拶した際、前回実施したヨシダナギの展開のことに触れてくださり、2つ返事で引き受けてくださいました。ありがたいことに、レシピ動画を制作する業社の方にも「何かおもしろいことがしたいならライツ社に相談した方がいいよ」とお声掛けまでしてくださったそうです。
そして、嬉しいことに新刊『この世界で死ぬまでにしたいこと2000』は紀伊國屋書店における「重点販売書籍」に選ばれました。これは、各ジャンルでいちばん売りたい本を集めて2ヶ月間、全店で仕掛けるというものだそうです。
(そしてそして、前回ヨシダナギの展開を担当した方は、紀伊國屋書店の中でその年もっとも活躍した人に贈られる賞を受賞されたそうです!しかも、あの展開を見て「紀伊國屋書店で働きたい!こんなおもしろいことがしたい!」と面接に来られた方さえいたそうです。これがいちばん、本当に嬉しかった。)
たった4人で営む小さな出版社の本をこのように取り上げてくださること、そしてベストセラーとなる芽を大切に育ててくださったことに感謝し、これからも全力で制作・営業に励んでいくとともに、「出版業界はこんなにおもしろいことができるんだ!」というニュースを発信し続けていきたいと思います。
※『この世界で死ぬまでにしたいこと2000』』はおかげさまで発売10日で重版が決まり、全国に展開を拡大中です。
ぜひご一読ください。
(余談)
実売を上げるぞ! と張り切って一日だけ「手売り」に挑んだのですが、結果はなんと0冊でした・・・。(大阪の紀伊國屋梅田本店で実施した際は40冊ほど売れたので自信満々で望んだのですが、完全に打ちのめされました。)というか、手売りスタッフがいなくなった瞬間たくさんのお客さんが本を手に取ってくれました・・・(すみません)。というわけで、東京での手売りは絶対に、おすすめしません!(涙)