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舞台に立つのは作家たち。66年ぶりの大阪公演「なにげに文士劇」

「なにげに文士劇2024」の旗揚げ公演が、2024年11月16日(土)大阪市のサンケイホールブリーゼで開催されます。

ライツ社のことをいつも応援してくださっている紀伊國屋書店梅田本店の百々典孝さんがこの舞台に出演され、半世紀書店員の井上哲也さんも応援団のおひとりであることを知り、ライツ社もこの舞台を盛り上げたいと思いました。なにより一流作家が集まって舞台に立つ文士劇っておもしろい! そこで今回は本番前の台本の読み合わせに潜入、そのレポートをお届けします。

文士劇とは、作家や評論家・画家など、文筆を生業としている人たちによる演劇のことです。文士劇は日本独自の文化で、明治時代から130年以上の歴史を持ちます。戦後には三島由紀夫や石原慎太郎らが出演して人気を博しました。現在でも平成に復活した盛岡文士劇が毎年上演されています。この文士劇、大阪では66年ぶりの公演となります。

原作は東野圭吾デビュー作『放課後』

今回上演するのは東野圭吾デビュー作の『放課後』。1985年に出版され、第31回江戸川乱歩賞を受賞した青春推理小説の初の舞台化です。

原作『放課後』のあらすじ
校内の更衣室で生徒指導の教師が死んでいた。犯人候補は続々と登場する。先生を二人だけの旅行に誘う問題児、頭脳明晰の美少女、先生をナンパする運動部の主将——そして運動会の仮装行列で、第二の殺人が起きてしまう。

演出・脚本をつとめるのは京都に拠点を構えるTHE ROB CARLTONの主宰であり、第2回関西えんげき大賞(2023)優秀作品賞を受賞した村角太洋。

出演は黒川博行、朝井まかて、東山彰良、澤田瞳子、一穂ミチ、上田秀人、門井慶喜、木下昌輝、黒川雅子、小林龍之、蝉谷めぐ実、髙樹のぶ子、玉岡かおる、百々典孝、湊かなえ、矢野隆

第一線で活躍する作家とその仲間たちが集まりました。

ハマり役続出。おおいに盛り上がった読み合わせ

8月、大阪市内の某所で読み合わせが行われました。

会議机を囲んで集合したキャストのみなさん。現地参加できなかったキャストは大型モニタでのリモート参加。終始なごやかなムードながら、読み合わせへの意気込みや緊張感が伝わってきます。

はじめに演出・脚本をつとめる村角太洋さんから注意点や概要の説明があり、模型を使用しての舞台装置の紹介がありました。トリックの肝となる更衣室の大道具はかなり力が入っているようです。

スタッフのト書きの読み上げに続いて、いよいよ読み合わせがスタート。分厚い台本をめくりながら、それぞれの役柄を演じていきます。不良生徒に優等生、数学教師、体育教師、刑事など配役が素晴らしく全員がハマり役。

東山彰良さん演じる「数学教諭・アーチェリー部顧問の前島」の探偵ぶり、湊かなえさん演じる「校内屈指の問題児・高原陽子」の必死のカーチェイス、矢野隆さん演じる「アーチェリー部主将・杉田ケイ」の快活な主将ぶり、門井慶喜さん演じる「刑事の大谷」の落ち着き払った取り調べ、など役柄とキャストのキャラクターが融合していて、声だけでも場面に引き込まれます。

真剣な演技と掛け合いに息をのむシーンがあったかと思えば、脚本のユーモアに一同で吹き出してしまうシーンもあり、かなりの盛り上がり。

活字だった脚本に実際の声と演技が合わさることで生き生きとした情景が浮かび上がり、聞き応えがありました。これが立体として舞台で演じられるとどうなるのか。本番が楽しみになる読み合わせの機会となりました。

演技することで作家の素も見せることになる

読み合わせ後、実行委員の1人、朝井まかてさんにお話をお聞きしました。

「まずいい脚本を作ってくださったことに感謝しています。それと、じつにいいキャスティング!ですよね。ほんとにいいメンバーが集まってくれました。

文士劇は素人芝居です。作家がいざ舞台に立ってあたふたして棒立ちになるっていうような、素人芝居のおもしろさもあるんですが、はなからそれを狙うんだったらこの『放課後』という作品を原作として選んでいません。そして村角太洋さんに脚本をお願いした限りは、まずは真っ当に誠心誠意やります。その結果、なにか起きたらごめんなさいね、笑ってください。

普段、読者のみなさんとはサイン会でしか会えないので、この機会に観にきていただけたら嬉しいです。サイン会では読者さんと言葉を交わす時間は限られています。わたしたちもある程度おすまししています(笑)。文士劇では舞台の上で演技することで作家の素も見ていただけるのではないかと思います。作家にこんな一面があるのかということも感じていただけるのかなと。わたし自身も楽しみにしています。」

朝井まかて
2008年、デビュー。13年、『恋歌』で本屋が選ぶ時代小説大賞、14年、同作で直木賞、『阿蘭陀西鶴』で織田作之助賞、15年、『すかたん』で大阪ほんま本大賞、他受賞多数。近著は、『秘密の花園』。

クラウドファンディングも実施中

今回、売れっ子の作家さんたち全員が揃うスケジュールを見つけるのは難しく、公演はなんと1回限り。

2度3度と公演できればそれだけチケットを販売できますが、1度きりの舞台とあって運営的には決して楽な見通しではありません。そこでクラウドファンディングで支援を募ることに決まったそう。

返礼品は作家たち自身でアイデアを出し合い、「お名前を小説の登場人物に採用」や「全出演者の直筆サイン入り台本」など、文士劇ならではのコースが充実しています。

当初の目標金額は達成していますが、実は目標額を低めに設定したこともあり、まだまだご支援は募集中とのこと。この機会にともに文士劇を盛り上げようと思ってくださるみなさん、ぜひご支援をお願いいたします。

公演情報

公演名:なにげに文士劇2024 旗揚げ公演『放課後』
日程:2024年11月16日(土)16:00開演(15:30開場)
会場:サンケイホールブリーゼ
出演:黒川博行・朝井まかて・東山彰良・澤田瞳子・一穂ミチ・上田秀人・門井慶喜・木下昌輝・黒川雅子・小林龍之・蝉谷めぐ実・髙樹のぶ子・玉岡かおる・百々典孝・湊かなえ・矢野隆
チケット発売:9月1日(日)正午〜
チケット料金:全席指定8,000円、U25★:5,000円(チケットぴあのみ取り扱い、お座席はお選びいただけません)
★観劇時25歳以下対象・当日座席指定引換券・要身分証提示
※未就学児の入場はご遠慮ください。
※公演中止の場合を除き、払い戻しはいたしかねます。
[チケット取扱]
●ブリーゼチケットセンターhttps://www.sankeihallbreeze.com/
06-6341-8888 11:00〜15:00 (発売日のみ10:00〜)
※窓口での販売は発売日翌日11:00〜ただし残席がある場合のみ。
●チケットぴあhttps://w.pia.jp/t/nanigeni2024/ Pコード526-483 +セブン-イレブン各店舗
●イープラスhttps://eplus.jp/hn_bunshigeki/ +ファミリーマート各店舗
●ローソンチケットhttps://l-tike.com/nanigeni2024/ Lコード54049 +ローソン、ミニストップ各店舗

公式サイト:https://nanigeni-bunshigeki.com/


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