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5.反対に、ライツ社は何がしたいんですか?

NewsPicks Publishing編集長の井上慎平さんとライツ社編集長の大塚の対談をお送りします。

目次
1.もともとはひとり出版社をやろうとしてた
2.出版社以外の企業が、本を出していく可能性
3.読者を消費者にしたくない。読者と一緒に育っていきたい。
4.NewsPics Publishing編集長が考える「ビジネス書づくり」3つの条件
5.反対に、ライツ社は何がしたいんですか?
6.出版社の輪郭をゆがませよう

井上 ところで、ライツ社はどうなっていきたいってイメージはありますか?

大塚 今ようやく3期目なんですけど、1期目は赤字だったんです。大赤字。

井上 大赤字?

大塚 2000万円くらいの赤。で、2期目が黒字。でも1期目の累積赤字で相殺された。で、3期目で、ようやくしっかり黒字になる予定なんです。しっかり給料を払えて、ボーナスも出て、ちゃんと役員報酬もとって、とできたのが3年目。

井上 いやーすげーことだな。

大塚 本当に、たくさんの人に支えてもらって。応援してもらえて。

で、じゃあここから何するの?っていう話なんですけど。これからも変わらず自分たちがおもしろい本を届ける、っていうの大前提なんですけど…。営業の高野と「もっと本屋さんのためにできることをやりまくろう」って話して。まずは「ギフトブック大賞」っていうのをやろうとしていて。

井上 おー。

大塚 新しい賞をつくる。やっぱり書店に売上の山をつくるっていうのは大事なので、それを新しい枠組みでつくりたいと思って。これを、いろんな書店さんとか出版専門の広告会社とかと相談して進めています。

あと、これはまだ全部をお話しはできないですけど、大阪でいちばん大きな書店さんと「その1店舗でしか売らない小説」をつくろうとしてます。

井上 んん?

大塚 これは書店さんの方からお声がけいただいたんですけど、明確な目的があるんですよ。

その方曰く、「地方の書店が東京でつくられた本を売るだけでは、もうAmazonと役割が被って衰退していくだけ」だって。でも、書店って昔は、本を売るだけじゃなくて、物語をつくって売るところまで全部やってたんですって。

井上 へー。

大塚 大阪だったら、たとえば「曽根崎心中」かなにかを大阪の書店が大阪の作家とか画家とか印刷屋を囲ってつくって、それを製本して売っていた。だから「元々、本来の書店の役割は、その土地の文化やおもしろい話をその土地で本にして、その土地で消費する、ってことだった。そういうのがないと、これから地方に本屋がある意味がない」って仰られてて。

井上 うんうん。

大塚 その先駆け的な事例として、大阪を舞台にした小説を、関西にある出版社(ライツ社)と、書店と、そこに住む作家でつくるっていうシリーズをやっていくんです。それを続けて、いずれは大阪のどこの本屋にも大阪の物語が並んだ書棚があるっていう状態を目指す。

井上 すげーいいなあ。うん。

大塚 それと、この前閉店してしまった「スタンダードブックストア心斎橋」の再生をお手伝いする予定です。中川さんと一緒にクラウドファンディングを立ち上げて。

井上 おお!忙しいぞ忙しいぞ!

大塚 あとは、さっきお話した上場企業と出版事業を一緒に立ち上げる。

井上 はい。

大塚 いろいろあるんですけど。やりたいことは二つで。

もっと書店さんに近い出版社になって、一緒にできることを増やすっていうのが一つ。もう一つは、出版社が業界の外に出ていくっていうことですね。この二つをやりたいと思ってます。

そしたらたぶん、出版社の役割が、印象が、ちょっとでも変わってくるんじゃないのかなと思ってるんです。今って、「ただ本をつくって売るのが出版社です」って、散々バカにされてるじゃないですか。

井上 はい。

大塚 「編集者って、作家のただの伝書鳩でしょ」とか。

井上 「なのに印税10パーセントでいいの」とか。

大塚 いやいやいや。

井上 いやいやいや。

大塚 出版社の役割ってこれだけあるんですよ、もっとできるんですよって示したい。

井上 そういうのやりたいすよね。みんなでどうしたらいい? って考える、今日みたいな場をつくりたい。

大塚 ちょっと話変わりますけど、最近新しい出版社少なすぎる問題、っていうのを気にしてます。

井上 ああ。ライツ社以降(2016年)、ほぼないですよね。

大塚 もう3年経つのに、です。別の業界だったら、3年あれば次々に新しいプレイヤーが出てきてるはずです。それはたぶん、次のプレイヤーに可能性を見せてあげられてないってことだから、自分でも反省していて。

だから、井上さんが立ち上がったあとに、ポコポコって1年に3社でも4社でもできていけば、それはすごくいいことなんだろうな、と思うんですよね。

井上 なるほど。なんか、「ちっちゃい(小さい)もん連合」みたいなのつくりたいですね。

大塚 文化に特化したわけでも、経済諦めたわけでもない、そのあいだで頑張る人たちの?

井上 そうですね。

大塚 出てきてこそ、健全。

井上 メディアなんか市場規模で言ったら小さいけど、でも世の中の人にどれぐらい大事に思われてるかとか、影響力あるかで言ったら、売上の10倍20倍ありますもんね。

大塚 最近いい傾向だなって思うのは、クラウドファンディングで本つくる事例がめっちゃ増えてるんですよね。

井上 おおお。

大塚 しかも、同人誌とか個人出版だけじゃなくて、すごく社会性のある企画がたくさん。ライツ社も2年前にやりましたけど、いろんな地方で生まれてるんです。

井上 へぇー。

大塚 広島で熱くお好み焼きを語る本をつくるとか、神戸でローカルエコノミーを築くためにその旗になるような本をつくるとか。会社じゃないけど、その土地にいるプレーヤー、デザイナーだったり、プランナーだったりが集まって、みんなでお金を集めて、本をつくっていこうって。

井上 うんうん。ローカルに、それこそベストセラーっていうよりは、そこに根差した1,000冊、2,000冊の本。あえて言うと、きっと、その流れは、それだけで終わりじゃない。

大塚 そうです。それを個人規模ではなく業界規模でやったらいいんやろなって。

井上 はいはい。

大塚 それこそじゃあ、福祉の会社が、教育の会社が、そういう連合をつくって出版をやるとか、ね。業界規模でその流れをつくっていけたら。

井上 うんうん。

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ライツ社
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