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本に救われた2020年だった

ライツ社の2020年、正確にいうと第4期(2019.9〜)のまとめを書きます。

第4期の出版点数は5点、うち2点重版。重版は40%と前期より下がってしまいましたが、売上は2億2942万円(前期比144%)で、初の2億円超えでした。では、振り返りです。

<2019年>

9月1日、ライツ社に新しい社員が増えました。

東京在住で、関東一円の書店営業を担当してくれることになった堀本さん。この半年後に世界は一変し、明石と東京の行き来ができなくなるわけですが、もし堀本さんがいなかったら……と想像すると、とんでもないことになっていたなあと思います。本当に堀本さんがライツ社にいてくれてよかった。

11月7日、サイボウズ式ブックスを始動。第一弾ととなる『最軽量のマネジメント』を出版。
https://note.wrl.co.jp/n/nadfd17ed98b2

IT会社であるサイボウズからお声がけいただき、「サイボウズ式ブックス」という出版レーベルを共同で立ち上げました。12月にはサイボウズが展開する「がんばるな、ニッポン」という広告と連動させたフェアを書店で実施するなど、ライツ社が「出版業界と他業界をつなぐ出島になる」という役割を強く自覚する事業となりました。現在は第2弾、3弾の制作が進行中です。

11月22日、『リュウジ式悪魔のレシピ』を出版。 
https://note.wrl.co.jp/n/ne01827afa9cd

この本が、ライツ社として初めて10万部を超えるベストセラーになりました。このレシピ本があったからこそ、ライツ社は2020年を乗り越えることができました。

11月29日、ライツ社初の画集となる『REMEMBER』を出版。
https://note.wrl.co.jp/n/nce4a212b5f47

著者は、明石在住の画家・絵本作家たなかしんさん。ライツ社初の画集であると同時に、初めて明石在住の方の本を出版させてもらうことになった一冊です。しんさんは、Herosという絵のシリーズにこんな言葉を寄せています。

ヒーローとはどんな存在だろうかと考えたとき、寄り添ってくれる者と答えたい。
敵と戦ってくれるわけでもなく、誰かを倒すわけでもない。誰も傷つけず、ただそっと寄り添い、心をぽっと温めてくれるような存在。
そうなりたいという願望かもしれない。
みんなのヒーローになれなくても、誰かのヒーローにはなれるかもしれない。きっとみんなそう。
そうであってほしい。

わたしたちはこの言葉がすごく好きです。ライツ社が出す本も、こんな存在でありたい。そう思わせてくれた、大事な一冊となりました。

<2020年>


2月19日、『恋をして生きてきたんだよな』を出版。
https://note.wrl.co.jp/n/n47add5e30f8f

こちらも、ライツ社としては初めてInstagramで活躍されているクリエイターとつくった一冊です。青春botさんが描く鮮やかで切ない絵の特徴を最大限に活かすため、たくさんの工夫を凝らした装丁は、デザインとグラフィックの雑誌「MdN」で紹介いただきました。JR大阪駅直結の商業施設LUCUAで展示してもらえたこともすごく嬉しかったです。

4月、緊急事態宣言により、多くの書店が休業を余儀なくされました。

小さな出版社にできることは、ほとんどありませんでした。なにか少しでもできることを探し、店舗が休業中でも贔屓の書店で買ったことにできる方法などをまとめると大きな反響がありました。

https://note.wrl.co.jp/n/n462a6180b968

また、自宅で少しでも世界旅行気分を味わっていただけるよう、2017年に出版した『全196ヵ国おうちで作れる世界のレシピ』を全文公開しました。想像を超える反応をいただき、朝日新聞やNHKおはよう日本に取り上げられ、結果、2度の重版を決めることができました。 

https://note.wrl.co.jp/n/n3d8a2d666a83

できることがほんの、ほんの少しでもあって本当によかった。

5月25日、ヨシダナギさんの新境地となる作品集『DRAG QUEEN』を出版。
https://cakes.mu/posts/31179

これまでの世界の少数民族ではない、ドラァグクイーンという新たな被写体に挑んだ作品集。企画が始まる前に、ナギさんのマネージャーである君野さんから一本の電話がありました。

「ヨシダが新しい挑戦をします。正直どうなるかわかりませんが、ヨシダはきっといい写真を撮ります。応援していただけませんか?」。

ぼくたちに断る理由はひとつもありませんでした。

ヨシダナギさんの前作、1万2千円という高価格にもかかわらず、6刷9500部という異例の売上となったベスト作品集『HEROES』も、2018年にライツ社から出版させてもらいました。その制作の前にも、君野さんからこんな電話があったのです。

「そろそろヨシダのベスト作品集を出そうと思います。たくさんの出版社からお声がけはいただいていますが、ヨシダがまずは大塚さんのご意向を聞いてほしいと言っています」

それは、「前職でナギさんの初めての作品集をつくった」という縁を大事にしてくださっていたからです。駆け出しの時期ならまだしも、その頃には超メジャーな写真家になっていたにもかかわらず、こんな小さな出版社として独立したわたしたちに声をかけてくれた。そんなナギさんの誠実さに全力で応えたかった。

7月26日、日本テレビ「シューイチ」で、カズレーザーさん推しの1冊として『毎日読みたい365日の広告コピー』が紹介されました。
https://note.wrl.co.jp/n/n843d3c0e96ed

そのおかけで2万部を超える大重版。でもそれよりなにより、小さな出版社が出した本が、しかも新刊ではなく3年前に出した本が、大の本好きとして有名なカズレーザーさんの目に留まった。そして、「目に留まった」ということは、どこかの書店さんが、ずっと平台で展開してくれていた、ということなんだと思います。願わくば、お礼を言いたいです。本当にありがとうございます。

9月20日、料理レシピ本大賞 in Japan 2020において、『リュウジ式悪魔のレシピ』が大賞を受賞しました。
https://note.wrl.co.jp/n/n8adc6c69f594

結果、受賞前は12万3千部だったのが先日ついに22万3千部を突破。「受賞後10万部の増刷」という数字は、そのまま応援してくださった書店さんに売上という形で恩返しできた結果でもありました。ホッとしている、というのが正直な今の心境です。

「何冊くらい売れると思いますか?」と著者のリュウジさんに聞かれて、「10万部を超えたいと思っています。それから、料理レシピ本大賞も獲りたい」と言いました。約束を守れて、本当に良かった。

10月5日、「ソトコト」11月号でライツ社が特集されました。
https://sotokoto-online.jp/3308

その号のテーマは「未来をつくる本」。わたしたちは未来なんて考えたことはないけれど、write,right,light.その思いだけを胸にただがむしゃらに走ってきました。取材を受けて気づいたのは、わたしたちに本の未来なんて大それたことは言えないけど、周りの方がライツ社の中に何か未来を見てくれているんだったらうれしい、という気持ちでした。

12月16日、ライツ社に6人目となる社員が入社しました。
https://note.wrl.co.jp/n/n722d79aa41bc

絵本・児童書の編集者、感応さんです。noteでの呼びかけのみという変わった採用活動でしたが、71名もの編集者の方にご応募いただきました。身の引き締まる心地とともに、第5期目は、100年残る絵本を目標に本づくりに励んでいきます。楽しみに待っていてください。

<総括>

2020年は、本に救われた一年でした。

世の中の情勢はもちろんのこと、ライツ社の中でもほかにもいろいろなアクシデントが重なり、本当に春先には潰れるんじゃないのかなと思っていた日もありました。

でもふたを開ければ、「世界のレシピ」や「365日の広告コピー」といった数年前の既刊本が売上を支えてくれました。本というものは、出版から何年経とうが、人が必要とするときに求められるものだということを実感しました。

また、今年「悪魔のレシピ」がこんなにもたくさんの人に求められたという結果も、本というものの存在意義を改めて信じさせてもらえる出来事でした。

そんな実感を今、感じられていられるのも、日本中の書店員のみなさんがわたしたちの本を売ってくれたからです。今年ほど、その事実に感謝する日々はありませんでした。本当にありがとうございます。

年末、阪急うめだで開かれた、たなかしんさんの個展にいき、展示されていた絵本の原画を眺めていると、ポロッと涙が出ました。びっくりしました。知らず知らずのうちにがんばりすぎていた自分に気づかされたような気がしました。

本とは、凍りついた心をとかす光です。

今年、2020年は多くの人の心がきゅうっとかたく小さくなってしまった年だったのかもしれません。その心を少しでもほぐせるような、少しでもあたたかい光で照らせるような、そんな本を来年もつくっていきたいと思います。

6人揃って初めての年末は、大掃除のあと海を挟んだ(船でたった15分!)淡路島に、淡路牛ランチを食べに行きました!あー美味しかった!

2021年も、どうぞライツ社をよろしくお願いいたします!

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ライツ社
出版業界を新しくしたい。もっと良くしたい。読者と、書店と、友達のような出版社でありたい。「本ができること」を増やしたい。いただいたサポートは、そのためにできることに活用させていただきます。